「英語が自然に身に付く子」がしている学習法 子どもならではの強みを生かすべし!

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英語の音声に慣れ親しんだ子どもは、やがて母語の発達と同じように面白かったり、心地よかったりする音の単語や文を抽出し、それをまねて発音してみたくなります。単語からとは限らず、文からまねる場合もあります。大人には到底英語とは理解できないくらいの喃語かもしれません。なにしろ子どもは面白いと思った音からまねていくのですから。

たとえば、「アングリー、アングリー」と繰り返す2歳児に母親が「何だろう?」と思ったら、絵本に出てくる”hungry”だったり、「アッペンダン、アッペンダン」は、飛び跳ねながら聴いている歌の”up and down”という歌詞だったり、といった例はたくさんあります。

「言ってみたい」という気持ちが大切

この子どもの「言ってみたい」という気持ちが大切です。母語の発達でも子どもは言いたい言葉から発語し始めます。実はこの子どもの言いたいという衝動が、言葉の習得には大切なのです。

よく「○○ちゃん、リンゴは英語でなんて言うの?」「Apple」「じゃあ、ブドウは?」「Grape」……などと子どもに聞いている大人がいます。この場合、大人が子どもの英語の理解度を確認したいだけで、子どもはその大人の期待に応えたくて英語を発しているのであって、決して言いたくて言っているわけではありません。

ある小学生のお母さんが「幼稚園のときにはたくさん英単語を覚えて話していたのに、小学校になったら言わなくなっちゃったの」と話していました。その子は小学生になって英語を人前で発することに恥ずかしさを感じ始めたのです。もともと言いたくて言っていたのではありませんから、恥ずかしくなって言わなくなったのです。

耳から聞いて慣れ親しんだ、言ってみたい英語を発語するには、発語する機会が必要です。聞いてばかりいても英語は身に付きません。言いたい英語をまねて口から発してみる、しかも英語を発語することが楽しい、といった経験が必要です。 

それも発語の場が「必然」でなければ子どもの発語は生まれません。日本語でもしたことのないレストランでのオーダーや、空港での会話には必然性はありません。子どもには、「これが言いたい」「言ってみたい」という気持ちが満たされる場やチャンスが必要です。

たとえば歌ったり、踊ったりできる歌や、子どもが登場人物に自分を投影できる物語のごっこ遊びなどが最適です。言葉をやり取りするには、相手や仲間が必要なので、こうした仲間がいる環境があると長続きします。言葉を発したくなる環境で、子どもが自由に英語を話してみる。そのような経験を積み重ねてこそ、子どもは英語力を付けることができるのです。

木原 竜平 ラボ教育センター 教育事業局長

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きはら りゅうへい / Ryuhei Kihara

1987年、筑波大学卒業、ラボ教育センター入社。東京、名古屋、大阪にて営業、指導者研修を担当。2002年より東京本社にて、外国語習得、言語発達、異文化理解教育について専門家を交えての研究に携わる。日本発達心理学会会員。日本子育て学会会員。ラボ・パーティは1966年「ことばがこどもの未来をつくる」をスローガンに発足し、2016年に50周年を迎えた子ども英語教育のパイオニア的存在。
 

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