日本の「破綻」は、もはや杞憂と言い切れない

大義なき選挙戦の裏で財政再建が置き去りに

マイナス金利……マイナス金利の枠をこれ以上拡大できないとして、イールドカーブ・コントロールを導入したのだが、問題は米国など先進国が、現在の好景気を維持できなくなり、バブルがはじける形で再び金融緩和政策に転換したときだ。

すでに米国の株式市場は連日史上最高値を更新し続けており、カナダや英国、そしてEUでも金融引き締めに転換するほど景気がよくなっている。IMF(国際通貨基金)も世界経済見通しを上方修正している。

しかし、現在の金融引き締め策はいずれ方向を転換することになるはずだ。景気は循環するから、いずれは再び金融緩和に転換するときがやってくる。EUのように、まだ量的緩和さえ終わっていないのに、という声が聞こえそうだが、EUは米国が金利を3度も引き上げている中で、これ以上緩和を続けられないと判断すると考えていいだろう。

日本以外の国が、金融引き締めから再び金融緩和に転じたとき、日本は円高に苦しめられることになるはずだ。日銀はさらなるマイナス金利を迫られることになる。銀行は、完全に国債市場からの収益を失う。国債による収益に依存していた銀行が破綻し、金融危機が再び起こるかもしれない。

実際に、日銀はすでにひっそりと毎月購入する国債の金額を減額しており、いまや年間60兆円ベースともいわれる。これを「隠れテーパリング(量的緩和縮小)」と指摘する専門家も多い。その是非はともかく、金融緩和を続けるという約束(オーバーシュート型コミットメント)をしている以上、国民に内緒で対応していると考えるのが自然だ。

金利操作……イールドカーブ・コントロールが維持できるかどうかが大きなポイントになる。前述したCDSの上昇による国債の逆ザヤで、銀行が国債投資をやめてしまえば国債市場は正常に機能しなくなる。これまで、突発的な金利上昇を支えてきたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や郵便局など、政府の息のかかったマネーが機能しなくなり、資金に余裕のある外国のヘッジファンドなどのマネーが、日本国債の金利を引き上げる可能性がある。国債のカラ売りを仕掛けられるかもしれないということだ。

要するに、このまま財政赤字を放置していても、アベノミクス=異次元緩和はいずれ破綻する可能性がある。問題は“きっかけ”だが、最も可能性が高いのは米国株式市場の下落かもしれない。

下落の幅によっては、FRB(米連邦準備制度理事会)が一転して金利引き下げに政策を転換する可能性が出てくる。米国の金利引き下げは円高になるため、日銀はマイナス金利の幅を拡大する必要が出てくる。ひょっとしたら「-3%」~「-5%」を余儀なくされるかもしれない。

こうした事態が起こってしまえば、日銀はどうやって景気回復を図るのか。その手段はもう残っていないはずだ。早ければ、数カ月のうちに米国景気が失速を始めるかもしれない。その覚悟と準備は必要だろう。

これまでの異次元緩和は革新的、それともおきて破り?

日本の財政赤字は、安倍首相の熱烈な支持者などによって繰り返し「心配ない」「トータルでいえば黒字」「財政危機説は財務省の捏造」といった、財政危機リスクに対するネガティブキャンペーンが行われてきた。メディアや国民の多くが「心配ない」と思い始めている。

しかし、日本の財政赤字が膨張し続けていることは、信用リスクの増加につながる。確かに、アベノミクスという日銀による異次元の量的緩和やマイナス金利の導入、イールドカーブ・コントロールといった、よく言えば「革新的なテクニック」、悪く言えば「おきて破りのその場しのぎ」の金融政策によって財政リスクが先延ばしされてきたともいえる。しかし、このまま放置すれば間違いなく、何らかの形で破綻がやってくるはずだ。

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