川重・三井造船、両社長が語る破談の真相(下) 三井造船 田中孝雄 社長

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――伝統的な造船事業の生き残り策としてではなく、非造船分野のためだった?

もちろん、造船もマンパワーが増ええば、省エネ船の開発などで有利になる。ただ、どこに主眼があったかと言えば、むしろ、伝統的な造船分野とは違ったところ。電力・エネルギー関連であったり、新たな海洋資源の事業領域であったり。川重は造船だけでなく、発電用ガスタービンやプラントなど幅広い事業、技術を持たれている。そういう意味で、いろんな絵がかけるな、と。造船の生き残りだけが目的なら部門同士で協議すればいいわけで、今回のような(会社全体の合併・経営統合といった)話にはならないでしょう。

――だから、再編相手として有力視されていたJMU(ジャパンマリンユナイテッド=IHIとJFEの造船事業統合会社)ではなく、総合重機の川重だったわけですね。

JMUは純粋な造船会社ですよね。

――目的の1つとして挙げた「新たな海洋資源の事業領域」とは何を指すのですか。

海洋基本計画の中で、日本も国策として海洋資源開発に取り組むという方向性が明確に打ち出されている。実際にメタンハイドレードなどの大掛かりな海洋資源開発が行われれば、さまざまな機器・設備が国内で必要になる。

当社はすでに海洋資源分野として子会社の三井海洋開発を通じてFPSO事業(浮体式原油生産貯蔵積出設備の設計・エンジニアリング業務)をやっているが、資源のある場所を見つけ出す探査システム(無人探査機や関連のシステム)なども自分たちでやりたい。ただ、そのためには多額の開発費とマンパワーが必要で、正直、当社だけではななかなか難しい。そういった点もいろいろと考えて、話をしていたわけです。

造船の収益は当面厳しい。LNG船に再挑戦

――2000年代半ばから続いた海運・造船バブルが終焉し、柱の造船と舶用エンジン事業は先行きが非常に厳しい。この逆風をどう乗り越えますか。

一般商船の建造に関して言えば、これからは(船価暴落後に受注した)採算の厳しい案件が中心になってくるので、今年度、来年度と収益が下がっていく。特に来年度は厳しいと覚悟している。舶用エンジンも船価下落の影響を受けるので方向性としては同じ。

ただ、一時に比べると、足元の受注環境は多少良くはなってきた。今が船価の底値とみた海外船主からの発注が出始めており、泳いでいる魚の数が少しづつ戻ってきている。実際、今年度はすでに第1四半期(4~6月期)だけで5隻のバラ積み船を受注できた(昨年度は年間でバラ積み船6隻、官公庁船3隻)。異常な円高が修正されてきたことも非常にありがたい。

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