日本企業は「CSR」を見直す時期を迎えている これから必要なのはサステナビリティ

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髙尾正樹(たかお まさき)/

1980年生まれ。東京工業大学卒業後、東京大学大学院にて技術経営を専攻。同大学院中途退学後、2007年1月に現在代表取締役会長を務める岩元美智彦と日本環境設計(株)を共同で設立。専務取締役に就任。2016年から現職

髙尾:デロリアンって、ゴミを燃料にして動きますよね。僕らはゴミになるはずの古着からバイオ燃料を作っているんです。それでアメリカのユニバーサル・スタジオ本社に直接電話して提案しました。「映画でデロリアンが行った未来の2015年10月21日に、映画と同じようにゴミでできた燃料で、デロリアンを走らせたいと思っているのですが、どうですか?」って。ユニバーサル・スタジオはこれに賛同してくれて、合同で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の公式イベントを開催することになったんです。

「デロリアンの燃料集め」という立て付けで、古着を回収したんです。セブン&アイホールディングス、イオンモールなど、たくさんの小売店がスポンサーと回収拠点になってくださいました。「古着を持ってきて、かつ5000円以上商品を購入すれば、デロリアンに乗って写真を撮れる」というイベントで全国を行脚したのですが、小売店としてはこれがいいPR施策だと感じていただいたようです。結果的に6万人以上から古着が集まりました。

「サステナビリティのため」では動かない

ウィンストン: いいですね。ドク(映画に登場するデロリアンの開発者)に教えてあげないと!

髙尾:ユニバーサル経由でドクのコメントもちゃんともらいましたよ! デロリアンが実際に走ったイベント当日は会場にキャパいっぱいの750人の観客が集まって、英BBCや米CNNも取材に来る盛り上がりようでした。

ウィンストン:いやぁ、面白い。古着の回収といえば、イギリスの大手小売店マークス&スペンサーの取り組みを思い出しました。新しい服を買うときに、ブランドに問わず古着を持ってくると割引クーポンがもらえるという仕組みを作ったんです。消費者の無駄なものを断捨離したいというニーズにも合致して、とても受けました。古着の回収については、欧米では路上に回収ボックスがあるなど盛んなのですが、日本ではどうですか?

髙尾:日本では毎年170万トン以上の衣料品が廃棄されていて、しかもその8割が埋められるか焼却されているんです。

古着がどうやったら集まるのか考えていく中で気づいたのが、「サステナビリティのために古着を持ってきてください」と言っても人は動かないということです。それで思いついたのがデロリアンのプロジェクトなんです。「エンターテインメントとして楽しいイベントに参加するために、古着を持ってきてください」というように変えたわけです。

ウィンストン:普段は古着で作った燃料は、どう使っているんですか?

古着を使ってデロリアンを走らせた話にウィンストン氏も興奮(撮影:今井康一)
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