日本企業は「CSR」を見直す時期を迎えている これから必要なのはサステナビリティ

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ウィンストン:サステナビリティというのは、「CSR(企業の社会的責任)」ではなくて、「あなたのビジネスを持続させるだけの水や原料などを調達し続けられますか?」「顧客が求める商品を、彼らが求める価格で供給し続けることができますか?」という質問に答えることだと思っています。

そういうことに「責任あるビジネス」という言葉を使われると変な感じがします。ゴミを路上に放置しないとか、大音量で音楽をかけないご近所さんに「責任があってすばらしい」と言っているような感覚です(笑)。

今2倍の価格を払っても未来に投資する

アンドリュー・ウィンストン(Andrew Winston)/プリンストン大学卒業後、コロンビア大学でMBA、イェール大学で環境マネジメントの修士を取得。ボストン・コンサルティング・グループで企業戦略コンサルティングに従事した後、タイム・ワーナーとMTVでの戦略マーケティング部門の管理職を経て、ウィンストン・エコ・ストラテジーズを設立。キンバリー・クラーク、HP、ユニリーバなどのサステナビリティ・アドバイザリー・ボードのメンバーを務めているほか、PwCのサステナビリティアドバイザーとしても活躍している(撮影:今井康一)

髙尾:僕らの取引先の担当部署が生産部門に変わったのは、彼らが必要とする「商品」があったからだと思っています。これまでは古着からバイオエタノールという燃料にリサイクルすることが中心でしたが、現在はポリエステルの革新的なリサイクル技術を導入した工場を建設しており、今後、回収したポリエステルの90%以上をリサイクルできる技術を用いた繊維の販売事業をスタートさせます。今のところ当社のリサイクルポリエステルは、流通する一般的なポリエステルの約2倍の価格設定です。それでも大手アパレルブランドは、リサイクルしたものを選ぶことになると思っています。

ウィンストン:価格が2倍といっても、ゴミの処理費用やこれからの資源不足を考えると、大きなコスト削減になりますよね。単に支出が2倍というわけではない。

髙尾:そう、僕らと取引する生産部門の人たちはそのあたりをちゃんと見ています。将来的に生産量が増えれば、価格も既存製品と十分競合できるようになるはずです。なにしろ僕らの原料はほぼ無料で、90%以上の効率でリサイクルするわけですから。

ウィンストン:現状2倍の値段でも選ぶ企業は、未来への投資をしているわけですよね。「地球を守ろう」という大ざっぱな理由で、選んでいるわけではない。

髙尾:「地球を守ろう」という決まり文句だけでは、企業も消費者も動かないというところはあると思います。

ウィンストン:それでデロリアンを走らせたわけですね。

髙尾:映画はご覧になったことがありますか?

ウィンストン:もちろん! アメリカ人はみんな見ていますよ。私も若い頃から何度見たことか。

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