(最終回)あなたには勇気がありますか

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●マネジメントに最も必要なもの

 第4回のコラム「どうすればマネジメントの質が上がるか」のなかで、「部下の問題が実は自分自身のマネジメントの問題であることに気づき、自分を変えようとすることによってでしかマネジメントの質は上がっていかない」と書きました。そして、「自分に矢印を向けるというのは、言うのは簡単ですが実行するには大変な勇気がいります」とも書きました。
 第3回のコラム「素敵な上司に共通すること」のなかで、素敵な上司に共通することは、「管理」という言葉からはほど遠い「部下のことを中心に考える優しさ」と、その優しさとは正反対の「厳しさ」を兼ね備えている人だと書きました。しかし、実は第3回のコラムに書いていない、素敵な上司に共通する重要な項目があります。それは「責任をとる」とか「逃げない」という言葉です。この二つの言葉もどこの会場でも共通して出てくる言葉です。

 私は、マネジャーとしてあまり優れた人ではなくても、この「責任をとる」と「逃げない」ということさえ出来ていればかなり素晴らしいマネジャーになれるのではないかと思っています。
 しかし、この「責任をとる」と「逃げない」ということも、言うのは簡単ですが行うのは大変です。「責任をとる」と「逃げない」ということを本当に行えば、人から非難されたり前途が閉ざされてしまったりします。これはかなりの勇気がいることです。

 全6回のコラムで、人のマネジメントと戦略思考について書いてきましたが、その両方に共通するマネジャーとしての大切な要素が「勇気」なのです。
 大量生産社会における人間の悲哀を風刺した映画『モダン・タイムズ』で有名なチャーリー・チャップリンは、映画『ライムライト』のなかで「All it needs is courage, imagination, and a little dough」といっています。日本語に訳せば「人生に必要なのは、勇気と想像力とほんの少しのお金」ということでしょうか。私たち人類の先輩は、人間にとって何が大切なのかを知っていて、それを私たちに伝えてくれていました。

 今回で私のコラム「悩める管理職のためのマネジメント心得‐脱MBAの経営入門」の連載を終了します。全6回のコラムが現場でご苦労されている管理職の皆様にとって何がしかのヒントになればこれに勝る喜びはありません。
 なお、この度の全6回のコラムの内容は、来る9月26日に東洋経済新報社から出版される「悩めるマネジャーのためのマネジメント・バイブル」から抜粋したものです。もし、今回のコラムに興味を持たれた方は、書籍にて全文をお読みいただければと存じます。ありがとうございました。
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國貞克則(くにさだ・かつのり)
1961年生まれ。東北大学工学部機械工学科卒業後、神戸製鋼所入社。
プラント設計、人事、企画などを経て、1996年米国クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。2001年ボナ・ヴィータ コーポレーションを設立して独立。中小・中堅企業の社長の右腕として財務・人事・戦略分野などの本社機能をサポートすると共に大手企業の中間管理職を対象に会計・リーダーシップ・戦略論の教育を行っている。また、子供向けの竹とんぼ工作教材を販売する「竹とんぼ屋」の店主でもある。
主な著書『財務3表一体理解法』(朝日新書)、『「財務3表のつながり」で見えてくる会計の勘所』(ダイヤモンド社)、『書いてマスター!決算書ドリル』(日本経済新聞出版社)、訳書に『財務マネジメントの基本と原則』(東洋経済新報社)がある。
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