住友ゴムが「ファルケン」の拡販に躍起のワケ ダンロップを欧米で売れない苦境挽回なるか

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住友ゴム工業の池田育嗣社長は米グッドイヤーとの提携解消を機に、「ファルケン」ブランドの欧米での拡販を精力的に進めている(撮影:今井康一)

タイヤ販売で欧州2位の英国には大きな一手も打った。2017年に約300億円を投じ、同国の大手タイヤ販売会社であるミッチェルディーバー社を買収。「『ファルケン』の販売拡大を積極的に進めている」(池田育嗣社長)。買収した会社では他社のブランドも扱っていることから、「ファルケン」は現状では販売の2割程度にとどまる。だが、他社製品に比べ利幅が厚くなる「ファルケン」比率は着実に増えていきそうだ。

北米で人気のSUV向け拡販急ぐ

また、提携解消に伴い、グッドイヤーから取得した米国のバッファロー工場でも「ファルケン」ブランドのタイヤを製造できるよう強化中だ。現在はグッドイヤー向けのOEM生産が中心で、「ダンロップ」ブランドの製品を製造しているが、2018年メドに終了する。

2019年末には現状の日産5000本を同1万本に引き上げ、市場のニーズが強いSUV用タイヤを「ファルケン」ブランドで生産できるようにする。製造品目の切り替えは計画どおりに進捗するが、「もうちょっと早くしたい」と池田社長も気持ちが入る。

ただ、住友ゴム全体では、「ファルケン」の売上比率は20%程度と低い。「欧米で『ファルケン』も伸びているが、『ダンロップ』も他地域で伸びている」(池田社長)ためだ。現在は、「ダンロップ」が売り上げの7割を占める。池田社長は「2020年までに『ファルケン』の比率を30%まで引き上げたい」と話す。

日産自動車が北米で2017年に発売したSUV「ローグスポーツ」に「ファルケン」ブランドのタイヤが採用された。住友ゴムは北米で人気が高まるSUV向けのタイヤの現地生産能力を増強する計画だ(写真:日産自動車)

欧米の「ダンロップ」事業を手に入れたグッドイヤーに対しては、住友ゴム関係者から「十分に活用できているようには思えない」との声も聞かれ、自ら育てたいという気持ちもにじむ。失われた10年に失ったものは、住友ゴムにとってもあまりに大きいが、「ファルケン」を強化しつつ、引き続き買い取りのチャンスを待つことになりそうだ。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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