米政権がしれっと進める「危険な規制変更」 小型武器販売の規制緩和が意味すること

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この新たな枠組みに反対してベン・カルダン、パトリック・リーヒならびにダイアン・ファインスタインの3人の上院議員がレックス・ティラーソン国務長官に宛てた手紙にあるように、現在発生している内戦や暴動は、多くの米国人がスポーツライフルや狩猟用品に分類されると考えているような軽量武器の不正な販売により支えられている部分が大きい。

小型の携帯式武器に関する規制の緩和は、これらの紛争の沈静化を使命とする米国とって、むしろ不利益となる。南スーダン、ウクライナならびにコロンビアのように、それぞれ状況の異なる国家における紛争の解決のための平和的手法を進めるために米国が推奨してきた包括的外交によるプロセスを無駄にしてしまう可能性があるからだ。米政府内の複数の機関および省庁が事実上、互いに厳格に働きかけを行い、国務省は米国製の武器により支えられている戦闘行為を終わらせることを目指していくはずであった。

紛争地域に密輸される危険性も

米政府が意図をもって内戦に参加する兵士に武器を供給することはないだろうが、米国武器製造企業がオープンな市場で販売する拳銃や自動小銃が密輸や迂回ルートを使用することによって紛争地域へともたらされる可能性はある。

ヨルダンの情報機関職員が、秘密裏に保管されていた分隊支援火器 (RPD)とカラシニコフ銃を不正に横流しした事件が昨年大きく報じられたが、これは、反体制派の中の穏健派が使用するためのものとして地下マーケットの武器商人のもとに渡るはずのものであった。FBIはその後、これらの武器の1つがヨルダンで同じ年に米政府関係者2人を殺害するのに使用されたと結論づけている。

こうした武器が、どこでも入手可能となる事態を未然に防ぐために必要な監視や安全対策を講じることなく、政府が紛争地域に武器を供給した結果として起こりうる危険性がよくわかる最たる例がリビアである。

2011年、リビアの独裁者だったムアンマル・カダフィに反対する武力行動の中で、政府の親アラブ勢力は (秘密裏にオバマ政権の支持を受けて)当時の政権打破を目指した反対派勢力に対し軍事的支援を行った。

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