米政権がしれっと進める「危険な規制変更」 小型武器販売の規制緩和が意味すること

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小型武器販売に関する規制を変更を狙う理由とは(写真:Jonathan Erns/ロイター)

ドナルド・トランプ政権は外交政策において大きな (それでいてあまり知られていない)過ちを犯すおそれがある。ロイターが最近報じたように、米政権は米国製の小型武器の販売管理を、詳細な審査で知られる国務省から、ビジネス界により近い商務省に移管しようと調整しているのだ。

世界市場における米国のシェアを拡大するための試みの1つとして省庁間にまたがるガイドラインを緩和することで、トランプ政権は、世界の何百万という人々を今この瞬間も悲惨な境遇に追いやっている内戦に拍車をかけるというリスクを冒そうとしているのである。

現在の紛争で使われているのは

この政策の狙いは、現在、兵士または軍隊と関連のない武器および弾薬の輸出を管轄している官僚的な形式主義を省略することで、米国の武器製造企業が海外にその製品をより簡単に販売することを可能にするところにある。ロイターの報道によれば、この新しい計画によって、銃を商業目的で輸出するのに、時に米議会の承認も必要なミサイルや戦闘機などと同じレベルの検査を受ける必要がなくなるということだ。

この変更で、自動小銃や拳銃のような武器は、国務省が厳格に規制している武器弾劾リストから商務省規制品リストへと移され、海外販売の許可はより簡素化された手続きを経ればできるようになる。トランプ政権側はこうした新たな手続きへの移行は、厳格な経済重視派である米国大統領の論理の延長戦上にあるものだと説明しているが、国務省からの権限の移転には想定外の、外交政策への悪影響が伴うことになるだろう。

過去50年以上にわたって大規模な紛争が大幅に減っていることとは対照的に、現在のシリア内戦のような主権国家の領域内における紛争が常態化している。そして、こうした紛争では、AK-47やカラシニコフ、狙撃銃、下位品質の爆薬といった小型武器が多く使用されている。軍隊での経験の少ない兵士でも半自動型の武器であれば戦場で使用できるというのが、こうした武器のアピールポイントである。

軽量の武器はゲリラ活動にも利用されやすい。AK-47は戦車、ミサイル防衛システム、あるいは、戦闘機よりずっと安価で、抜け穴だらけの国境をすり抜けることも可能だからだ。

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