(最終回)あなたには勇気がありますか

(最終回)あなたには勇気がありますか

國貞克則

●差別化された戦略を生み出すために必要なもの

 第5回のコラム「将来進むべき方向性を見抜く」のなかで、「SWOT分析では戦略は生み出せない」と書きました。そう書いたのは、分析的・論理的戦略策定論を攻撃するためではありません。戦略策定の基本はやはり分析と論理思考でしょう。膨大な知識や情報を持ち、それを理解しやすいサイズに分類し、論理的に考えて仮説を作っていくというプロセスがなければ何もはじまりません。
 ただ、私が読者の皆さんに伝えたかったことは、分析的・論理的戦略策定論だけで戦略を作るのはなかなか難しいということです。多くの組織における戦略策定の問題と限界は、戦略作りを分析だけで終わらせているところにあります。

 戦略策定で大切なことは進むべき方向性を決めていくことです。そのためには将来の方向性を見抜く眼、本質を掴む力が必要です。そのような力はどうしたら身につくのか。それは机の上で論理的に考え抜くことだけではなく、現場で多くの経験を積むことが大切なのです。
 また、将来の方向性を定めるには、人の「思い」やその組織の「らしさ」などの個性を大切にすべきです。そして、自分や組織の個性を大切にして自らの存在意義を問い詰めなければなりません。それがなければ他社にはない特徴も作れませんし、ぶれない軸も見つからないでしょう。

 自らの存在意義を問うことにより自分のなすべきことがわかれば、次にやることは自らの強みを創り出すことです。自らの強みを分析するのではなく、強みを紡ぎ出すという発想が大切です。そして、最後にはその戦略と戦死するような覚悟と勇気が必要です。
 ビジネスでは戦略は実行されなければ戦略になりません。実行されない戦略はただの計画遊びです。そして実効のある戦略にするには、他人がやっていない、もしくはだれも過去にやったことがない方向に向かって決断し踏み出さなければなりません。ですから戦略が本当に戦略になるのは、最後は戦略を実行する人の勇気、覚悟によるのです。逆にいえば、その組織が戦略を作れるかどうかは、組織の中に覚悟と勇気のある人がいるかどうかにかかっているともいえます。
 神戸大学の三品和広氏が、戦略は結局人によると指摘されていますが、私も同感です。ヤマト運輸も花王もキヤノンも、いま特別な競争優位性を持っている会社は、過去にそのような勇気ある決断ができる人がいたからなのです。

 私がコンサルタントとして駆け出しのころ、ゼロから事業をスタートし上場までさせた会社の社長さんと「ビジネスには失敗はつきものだ」というような話をしていたとき、私は「だからビジネスをスタートするときは慎重に行うべきですね」と申しあげました。するとその社長さんは「小さな失敗には小さな気づきしかない、大きな失敗をすると大きな気づきがある。だから、ごちゃごちゃ考えずにやることが大切なんだ」といわれました。
 戦略策定の方法に唯一絶対の方法論などありません。もし、だれでも簡単に実効性のある戦略を作れる戦略策定論があれば、それはまやかしの戦略論でしょう。差別化こそが戦略の命だからです。戦略はあるフレームワークを使って頭で考えたくらいではそう簡単に生み出されないのです。そのことだけはよく認識しておいていただきたいと思います。
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