日本流「ホーム乗車位置」は英国で根付くのか なぜか不満の利用者も…その理由は?

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今回乗車位置目標がペイントされたビクトリア線キングスクロス・セントパンクラス駅では、あくまで位置を示しただけで整列乗車は行っていない(筆者撮影)

今回のキングスクロス・セントパンクラス駅の乗車位置目標はあくまで位置が示されただけで、日本のような整列乗車が行われているわけではない。このため、ホーム上の緑色にペイントされた乗車位置周辺に人が群がり、列車が到着するとドアを目掛けて押し合いへし合いという光景にはさほど変化はない。

しかし、なぜ欧州では日本の鉄道のように、きちんとした停車位置や乗車目標をこれまで設けてこなかったのだろうか。これは筆者の見解だが、欧州では日本のように整列乗車を実施しなければ収拾がつかなくなるほどの深刻な混雑がないため、わざわざコストをかけてまで停止位置目標などを定める理由はない、ということだと考える。

「乗車位置」は英国に根付くか

日本人が当たり前と思っている整列乗車は、外国人には非常に奇妙なこととして映っているようで、きちんと整列した乗客が、到着した列車のドアがずれたことで、全員カニ歩きで横へ移動する……という、整列乗車をジョークのネタにしたテレビコマーシャルが放送されていたほどだ。

大混雑のビクトリア線オックスフォードサーカス駅に到着した列車。ラッシュ時のロンドン地下鉄はかなり混雑するが整列乗車は行っておらず、乗客は適当な場所に立って列車を待つ(筆者撮影)

とはいえ、ロンドン地下鉄の利用者は今も増加しており、ピーク時には駅構内への入場制限を行うなどして対処しているが、それも限界に近づいている。乗車位置目標にきちんと整列して列車を待ち、列車が到着したら降りる乗客を先に通し、ドア付近に立っている乗客はいったんプラットホームへ降り、降車が終わったら中まで順に詰め合わせながら速やかに乗車……という、日本では当たり前の事柄をきちんと守れば、列車を増発するよりはるかに効果的ではないのかと、満員の地下鉄に揺られながら筆者はいつも考えている。

今回のキングスクロス・セントパンクラス駅に施された乗車位置目標が、今後他の路線や駅に普及していくのか、そしてこの方法は英国人に受け入れられるのか、大いに気になるところだ。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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