「自民vs希望の党」は看板倒れで残念すぎる 党首討論は「3極」の争点が拡散、奇妙な舌戦に

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自民党内では「50議席以上減らせば、必ず党内に安倍降ろしの動きが浮上する」(自民長老)との声が多い。解散前勢力からみれば50議席減でも自民単独過半数で、自公では衆院の絶対安定多数も上回る計算となるが、「50議席も減らして退陣しなかった例はない」(同)のが自民党の歴史でもあるからだ。

首相が「(選挙後の)11月にはトランプ米大統領の初来日もあり、北朝鮮情勢もさらに緊迫する」と選挙後の外交日程に言及するのも、自民党内で身構える反安倍勢力へのけん制にもみえる。

「モリカケ隠し」で言い合い、政策議論は深まらず

一方、解散の「大義名分」でも首相は防戦を強いられている。党首討論でも「『森友・加計隠し解散』としか言いようがない」(志位氏)などの批判が相次いだ。首相は「北朝鮮危機への対応」や「消費税増税の際の使途見直し」などを大義名分としているが、説得力に欠ける。小池氏も含め「そもそもなぜ審議抜きの冒頭解散なのか」との追及にきちんと答えられないからだ。

志位氏ら革新勢力が攻撃する「森友・加計学園疑惑」に関しては、党首討論の代表質問で朝日新聞の論説委員らも追及した。首相の昭恵夫人や「腹心の友」とされる加計孝太郎・加計学園理事長の名も挙げてのストレートな質問に首相も気色ばみ、加計学園の獣医学部新設問題での朝日新聞の報道などを「意図的で公平さに欠ける」と反撃。朝日の論説委員との間で「きちんと報道していない」(首相)「いや、ちゃんと報道している」(朝日)と言い合う一幕もあった。

一方、今回選挙戦の重要な争点となる憲法改正や消費税増税の可否については各党首の間で微妙に見解が分かれた。首相が主張する「憲法9条での自衛隊明文化」については「改憲勢力」と目される小池氏や松井氏も否定的で、与党党首の山口氏も「国民の考えも含め、議論はまだ熟していない」と慎重論を述べた。

また、2019年10月からの消費税10%への引き上げについても、「凍結」を主張する小池氏が巨額の財源が必要な「ベーシックインカム」(最低限所得保障)の導入を打ち上げていることに対し「財源はどうする?」との質問が出たが、小池氏の説明は具体性や実現性に欠け、論議は深まらなかった。

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