ユリノミクスに滲み出る「天下取り」への野望 もはや衆院選出馬への歯車は止められない?

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同じ5日には小池知事が実質的オーナーである「都民ファーストの会」でも分裂があった。音喜多駿都議と上田玲子都議の離党だ。

そもそも音喜多氏と上田氏は、2016年の都議選から小池都知事を応援。2人は両角穣都議とともに「かがやけTOKYO」を構成していたが、小池都政の発足で都民ファーストに合流。音喜多氏は当時、幹事長を務めていたが、やがて干されていく。

まずは人事だ。9月に都民ファーストでは代表交代があったが、それを決したのは小池知事を含む3名のみだったという。また知事から築地市場の移転問題を任されていた小島敏郎元青山学院大学教授が都民ファーストの会の政務調査会事務総長に就任した経緯についても、ほとんどの都議に知らされなかった。

政務活動費から月額15万円と月額6万円の党費が吸い上げられているが、その使い道が不明瞭だと音喜多氏や上田氏は訴えた。

都知事としては完全に行き詰まっている

それ以上に問題は、都議としての活動を阻害するほどの閉鎖性だ。「議会での質問内容をチェックされ、文書質問も禁じられた」と上田氏は離党会見で述べている。

「本当に小池知事になって以降、自由な議員活動とはほど遠い状態だ」。そう話すのは都議会自民党の川松真一朗都議。「我々が都の職員に資料請求や問い合わせをすると、それがそのまま小池知事側に上がっていく。そして答えていいものかどうかを検討するようだ」。

実際に川松氏は、9月21日に開かれたオリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会で小池知事がどのように判断したのかについての資料を求めたが出てこなかったという。「小池都知事になって、都政はさらに悪くなった」という声は少なくない。

こうして見ていくと、都政において小池知事は成功しているとは言い難い。築地市場移転問題も滞ったままで、いたずらに維持費の負担だけが増えていく状態だ。環状2号線問題の解決のめどもたっていず、2020年五輪に間に合うかどうかはわからないと言われている。まさに問題山積。都知事として、こうした問題に真摯に向き合っていく意欲は失せているのではないだろうか。

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