福島沿岸で2017年に起きている大転換の実態 若い人が集まり、活気が出てきている

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:動き出したというのは、具体的に何が動き出しているんでしょうか?

藤沢:これまでは、許可があれば一時的に、「準備宿泊」として泊まっていました。しかし、だいぶ広い形で戻って「住む」ことができるようになったということです。「戻っていいのか」「戻れないのか」、迷われている方が多かったんですけど、「移住される方は移住する」「戻る方は戻る」というふうにだんだん決め始めているというのは、大きな変化ですね。

:僕、浜通りでやる気のある若手の県内外の人と一緒になったことがあって。復興というよりかは、元あるものよりも新しいものを作っていこうという機運が出ているなと感じました。現状、地元としては実際いかがですか?

藤沢:すごくやはり目立っているのが、あの地域に住む若い人たちがとっても元気で。外の人は予想もしないかもしれないけど、とても明るくこの地域を盛り上げようとしているのがとっても印象的ですね。

:具体的にはどんな動きが出ていますか?

藤沢:福島の沿岸だと、南相馬市が原発で避難していた地域の中だと一番人口が多かったんです。「小高地区」が原発から20キロ圏内に入っていたので避難を余儀なくされていたんですけど、それが戻れるようになって。この地域に、今年から高校がスタートしたりと、若い人も集まってきていて。その中で注目したいのが、「小高ワーカーズベース」。和田智行さんという方がリーダー(代表取締役)です。小高地域では、戻る人は少しずつ増えてきているけど、スーパーがなかったり、クリーニング屋さんがなかったり、いろんなサービスが足りてないんですよね。そこを1個1個増やそうとする動きです。

:どのように人を巻き込んでいく取り組みになっているんですか?

藤沢:もともと和田さんって、東京で情報通信の会社の経営者でもあったんですけど、小高地区の出身で、震災後に戻られました。彼らもUターンしている身として、外にいる人がどれだけ入るかということをとても大切にしているので、僕らのような外から入ってかかわろうとしている人に対してとてもオープンなんです。僕らも和田さんと提携・連携しています。

:それはうれしいですよね。僕も小高は震災直後に入りましたけど、ここからどうやって復興するんだろうかと。商店街はネズミとか害虫にまみれてしまって。でも、おじいちゃんおばあちゃんたちが一生懸命花を植えていたりとか、この街を絶やしてはいけないんだと。だから本当に、「きたー」という感じで。

藤沢:そうですよね。ここからようやくスタート。電車も浪江まで通るようになりました。現地の皆さんのうれしさも僕らに伝わってきます。

日本、そして世界のモデルとなる街を作る

:でも、こうした福島の現状を何も知らない人は、「え、そんな起業とかの動きがあるの? そんなことをできるの?」と感じる方もいるかもしれませんね。どういう情報を発信していきたいですか?

藤沢:和田さんが「フロンティア(未開拓の領域)」って言葉を使うんですよね。「南相馬のこの地域は大変な状況になったけれど、実は今新しい街づくりがスタートしていて、これから発展するんだ」と。これを聞いて「本当にそうなの?」と思う人もいると思うんです。でも、高校もできたり、人口も今は1000人くらいですが、これが2、3年で3000人、5000人と増えていく予想もあります。大変なところを支えたいという方にも来ていただきたいのですが、事業をやったり新しいことをやるうえでもチャンスがある場所。もっと言うと、高齢化も進む大変な中で、こういう時代だからこそ必要な街がこの場所で作られていくと思うんです。中国だってこれから高齢化が進むわけで。僕は夢としては、東北で新しい街ができて、それが日本だったり海外にもそれが参考になっていくようにと。福島は世界からも応援されている街ですから、世界に対して何かお返しできるといいですね。

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