マッキンゼー「強さの秘密」はどこにあるのか アイコン化した強い組織の研究<1>

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答えは単純だ。業界の最高の人材が集まっている集団で、学びたいからだ。同社のあるコンサルタントは言う。「やりがいのある環境よ。周りの人たちは、私の成長を重視してくれている。マッキンゼーでの6カ月間で、学校や大学で学んだ8年間よりもプロとして成長できた」。

選考の最初のステップは履歴書のレビューだ。分析能力を見るのはもちろんのこと(難易度の高い専攻、一流大学、優秀な成績、あるいは優良企業での職歴)、チームや対クライアント、リーダーシップなどのスキルを伸ばせそうかも考慮される(大学在学中にチームをまとめたり、新しいプロジェクトを立ち上げたりするような、リーダーシップを発揮する活動をしていたかどうか)。インタビューに招かれた候補者は、2回から3回、それぞれにいくつかの「ケース・インタビュー」を集中して受けることになる。

インタビューはコンサルタントが直接行う。ケース・インタビューでは、抽象的かつ現実的な状況が提示され、複雑な問題に対し、素早く考えを組み立てて答えを導き、それを伝える能力が試される。

厳しい体験だというのもうなずける。候補者たちがインタビューに備えて何カ月も前から準備をするのはよく知られていることだが、それでも第1ラウンドの途中で挫折してしまう者が後を絶たない。

不採用になっても不満には感じない

Glassdoor.comは、従業員たちが匿名で会社を比較するサイトだが、マッキンゼーは最もインタビューが難しい会社と評されている。だが、興味深いのは不採用になる者が多いにもかかわらず、64パーセントの候補者がプロセスを「とてもポジティブ」だと考えていることだ。「ネガティブな体験」という回答は、わずか8パーセントにとどまる。

マッキンゼーでは、候補者がなぜ採用されなかったのか、明確なフィードバックを本人に提供しているからかもしれない。つまり仮にうまくいかなかったとしても、プロセスと結果は妥当だと思われているのではないだろうか。

インタビューの最終ラウンドが終わると、なかでも本当に優秀な者だけに入社のオファーが出される。あるビジネス・スクールの教授は、こう述べている。「マッキンゼーは、私のクラスで、是非とも選んでほしいと思う非常に優秀な学生を必ずしも全員は採用していない。……ただ、同業他社のように、優秀でない学生を選んだことは一度もない。そこは感心している」。

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