日本人が知らずにしている外国人差別の実態 無意識のうちに観光客を傷つけていないか

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もちろん、意図せず(あるいは意図的に)偏見や差別を行っているのは日本人だけではないし、世界中どこに行っても偏見や差別はある。自ら差別の対象になったという人も少なからずいるだろう。だからといって、日本人がこのままでいいわけではない。知らず知らずのうちに、偏見と差別をしていることは、日本の評判にも悪影響を与えるからだ。

これは、観光業が経済的にどれだけ大切か、移民が日本の人口減少や少子化を阻止するのにどれほど必要なことか、国内のビジネスが2019年のラグビーワールドカップや、2020年のオリンピックなどに向けて投資していることなどを考慮すると、重大な問題だ。

現在、日本は否が応でも、世界中の注目を浴びていて、海外旅行先としても人気が出てきている。オリンピックのような一大イベントが近づく中、「日本人」と「非日本人」に対するサービスが顕著に異なるようなことが起これば、国際的な日本の評判は劣化する。世界の多くの人は、日本はサービス大国だと心得ている。そんな国で偏見や差別にあったとしたら……。サービスの質の低下や「日本人」と「非日本人」との二極化がより顕著になる中、差別的な考えを今すぐ対処する必要がある。

では、偏見や差別を減らすにはどうしたらいいだろうか。日常生活でできることは3つある。1つは、「日本語で話す」こと。たとえば、成田空港の土産物屋の場合。とても簡単に変えられることのひとつは、店員が日本語で、日本人の客と接するのと同じように話すことである。そうすれば誰でも気持ちよく買い物ができるだろう。

日本人ができる3つのこと

まったく日本語が話せない外国人であったとしても、店員が最初に日本語で話してから、紙切れでのやり取りがあればそんなに不快にならないはずだ。結局、ここは日本だ。英語を話すことはこの国では普通ではない。だいたい観光客も旅先の人々に英語を話すことを期待すべきではない。言語を覚えなければいけないのは、その国を訪れる外国人のほうである。

2つ目は「外見で人を判断しないこと」。肌の色や顔の特徴、その他の視覚情報で相手の特性を決めつけないことだ。外見で判断すると、疎外したり、不快な思いを人にさせたりする。あなたの行動が親切心からだとしても、相手はそれに怒ったり、傷ついたりするかもしれない。

そして、3つ目は「外国を旅すること」。海外旅行はかつてないほどお手頃になってきている。格安航空会社(LCC)やエアビーアンドビーなど民泊を利用すれば、パッケージツアーで行くより、行動がより自由で経済的に旅を満喫できる。実際に日本を出てほかの国を訪れれば、人は本質的にはどこに行ってもそう変わらないということがわかるだろう。その国の言語がわからなくても、ジェスチャーやフレーズブックを使えば、容易にコミュニケーションが取れる。

観光ブームと押し迫るオリンピックは、日本人がどのように世界と接するかを変え、地球規模での日本の存在を確立させる。諸外国からの容認や称賛や、他国よりも強い国際的立場に立つことばかりに気を取られず、日本を訪れる人々を理解して親しみ、差別へとつながる古い偏見を取り払うときがきている。

真木 鳩陸 フリーランス翻訳家、ライター

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まき ぱとりく / Patrick Mackey

米国・オレゴン州生まれ。2004年早稲田大学で留学、2006年オレゴン大学卒業後、日本に移住。兵庫の旅行会社でライター・HPコンテンツ制作担当をした後、大阪の翻訳会社で翻訳家、コピーライター、校訂者を経て、フリーランス翻訳家・ライターに(現在は九州に在州)。『Osaka Insider: A Travel Guide for Osaka Prefecture』『Finding Fukuoka: A Travel and Dining Guide for the Fukuoka City Area』を出版。2016年12月に日本国籍を取得。連絡先:makipatoriku@gmail.com

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