東京五輪の経済効果、「3兆円説」は本当か? 都市力向上となるか、ムダ遣いとなるか

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7月、英国政府が昨年のロンドン五輪の経済効果を99億ポンド(約1.52兆円)と発表。さらに、五輪開催後の1年間に企業が締結した新規契約や売り上げの増加、外国からの投資の総額で見た経済効果は、開催費用の約90億ポンド(約1.3兆円)を上回ったと結論づけている。その象徴として、開発が遅れていた地区にメインスタジアムを建設したことで、今では多くの人が押し寄せていることを挙げている。

だが、日本で開催された直近の五輪となる長野冬季五輪(98年)の場合、施設整備など巨額の資金がかかり、2002年度に約1.6兆円の県債残高を抱えてしまった。それから減少しているが、県債の利払いと関連施設維持費は、現在も財政を圧迫している。長野五輪がなければ、県民へのサービスが充実できたのではないか、という議論にもなる。

一方で、早稲田大学スポーツ科学学術院の武藤泰明教授は「五輪の経済効果がいくら、という議論は非常に内向きな話」と指摘する。武藤教授は、今回はパラリンピックが開催される点が前回の東京五輪と違うとし、「開催までに世界的な流れであるバリアフリーが施されたインフラをどう整備できるか。また、震災に備えて都市復興の道筋を五輪開催に備えた都市計画にどう盛り込んでいくかが大事」と言う。それが首都・東京で実行できれば、五輪後も地方で実施される国体(国民体育大会)やアジア大会、各競技のワールドカップなどにも適用できるためだ。

さらに、「施設面だけでなく、東京が、または日本が、あらゆる国のあらゆる人をどうもてなすことができるか。おもてなしという日本人の長所を、外国は日本人以上に評価している。それが五輪で発揮されるかどうかが課題だ」(武藤教授)。東京開催であれば、五輪本来の「平和の祭典」となるように計画するのが、東日本大震災後の東京、ひいては日本の役割ではないかと武藤教授は問う。

(『週刊東洋経済』2013年9月7日号の記事を一部修正して掲載)

週刊東洋経済編集部
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