台湾新首相は低人気の蔡英文総統を救えるか 同性婚、脱原発、年金・・・立ち塞がる9つの難題

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挑戦8 台湾独立の主張と対中関係

頼清徳氏の政治的主張は、台湾独立派の色彩が鮮明だ。さっそく9月26日の立法院で、「私は台湾独立を主張する政治家だ」と表明している。また今年6月に訪米した際、対中関係について「親中愛台」(中国と親しくし、台湾を愛する)という考え方を示した。つまり、台湾を愛するだけでなく、両手を開いて中国にも友好の手を差し伸べ、交流を通じて理解と和解、そして平和的発展を増進すべきだと語っている。

この「親中愛台」論は、中身があいまいで、解釈も明瞭ではない。中国にすり寄るというわけでは決してないのだが、独立派という強固な支持層から抜け出し、独立派色を薄めるという意図は明白だ。しかも、行政院長として頼清徳氏が管轄するのは内政であり、対中国政策の大権は蔡英文総統の手中にある。将来、両者がどのようにすり合わせをするのか、注目を集めている。

挑戦9 蔡英文総統と共存共栄できるか

頼清徳氏と蔡英文氏、共に政治姿勢は強気だ。この点において、双方が今後対立する事態を招くのでは、と憂慮されている。将来、双方の間には調整役が必要だとの指摘もある。両氏、そして新潮流派が運命共同体となった後、双方がコンセンサス形成の方法を見つけ出せなければ、非常に悲惨なことになるはずだ。その道を探し出すために、努力しなければならないだろう。

うまくいけば将来の副総統候補も

以上、さまざまな挑戦が待ち構えているが、頼清徳氏の行政院長就任後、世論調査での支持率は60%前後に達している。もっとも、民進党のある長老政治家は、「過去十数年間、行政院長は頻繁に交代してきたが、交代しても問題は解決できなかった。現行の総統制度では行政院は責任を負うが権限がないといった、制度運用上の問題を指摘する人はいなかった。頼清徳がその例外となれるか。もちろん期待するが、やはりリスクは非常に大きい」と分析する。

頼清徳氏は、高い評価を受けた地方首長というオーラをまとって、中央政界入りを決断した。もし、ここで蔡英文総統の声望を高めることに成功し、2018年の統一地方選挙に勝つことができれば、国民党の馬英九総統時代に行政院長を務めた呉敦義(前副総統、現国民党主席)と同様のモデルで、2020年の総統選挙で蔡英文総統とコンビを組む副総統候補として最右翼に立つことになる。反対に、もしうまくやれなければ、「頼神」は神棚から落ちてしまうことになるだろう。

挑戦すべき課題がとても多く、しかも難題が非常に多い。頼清徳氏が行政院長就任を発表する記者会見。両手をしっかりと膝の上に置き、姿勢を正したそのとき、頼清徳氏は全国民からの期待を実現するため、すでに十分な準備をしていたとは思うのだが。

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