少子化という重い病を克服する処方箋がある 人口が急減していく日本が選ぶべき道とは?

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秋田や青森、高知、山形などはすでに毎年1%以上の人口減に。このままだと「毎年1県まるごと消滅する時代」が来る。だが、少子化を緩和する「唯一の方法」がある(写真:うげい/PIXTA)

経済予測のなかでも、将来人口の動向は高い精度で予測ができます。株価や為替相場などは、さまざまな要素が複雑に絡み合うため、正確に予測することは困難です。

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ところが将来人口については、予測するうえで必要になる要素が主に出生率と平均寿命の2つしかありません。この要素の少なさが、高い精度での予測が可能となる要因です。そのため、今後の出生率に劇的な変化がなければ、かなりの精度で50年後の日本の悲惨な姿を描くことができるのです。

すでに地方は「1%超のハイペース」で人口が減っている

日本が懸念すべき最大の問題は、誰もが認めるように少子高齢化しかありえません。

現実の数字を直視しながら少子高齢化の行く末を眺めてみると、2065年には日本の総人口は3割も減ってしまうばかりか、高齢者を支える労働力人口にいたっては4割も減ってしまうからです。少子高齢化が長期的にもたらす悪影響は、国家としての経済規模の縮小にとどまらず、社会保障費の膨張、税収不足に伴う財政逼迫、治安の悪化など、私たちの生活水準の著しい低下を招くことになるでしょう。

2017年1月1日時点の日本の総人口は前年の2016年から30万8084人減り、1億2558万3658人となっています。その減少幅は1968年の調査開始以降で最大となり、初めての30万人超えとなったのです。それでも日本の総人口から見れば、今のところその減少率は0.24%にすぎないのかもしれません。

しかしそれ以上に深刻なのは、秋田県の1.34%を筆頭に、青森県1.12%、高知県1.06%、山形県1.00%、和歌山県0.99%といった具合に、地方の人口がその数倍のペースで減っているということなのです。

人口が減少する要因には、死亡数が出生数を上回る「自然減」と、転出数が転入数を上回る「社会減」の2つがありますが、東京や神奈川、大阪、愛知、福岡といった大都市圏から離れて地方に行けば行くほど、自然減の影響だけではなく社会減の影響も大きいという傾向があります。人口流出に悩む多くの県では、県内の高校を卒業した学生の半数超が進学や就職のために県内を離れ、多くはそのまま県外の大都市圏に就職しているからです。地方では若者が大都市圏に流出する傾向が止まらず、日本全体の出生数減少に伴う少子化に拍車がかかっているのです。

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