カタルーニャ独立騒動は、まだ激しさを増す スペイン政府も振り上げた拳を下ろせない

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カタルーニャ州側も引くに引けない理由がある。カタルーニャの州政府は穏健離脱派が結集した非多数派政権で、強硬離脱派が閣外協力する。投票率が伸び悩んだとは言え、圧倒的多数が独立に賛成した住民投票の結果を無視することは難しい。自治拡大など中央政府との対話路線に切り替えた場合、州政府はもたないだろう。

双方ともに振り上げた拳のやり場に困る状況にある。事態が早期に沈静化するよりも、いったんは両者の緊張が継続するか、激化するとみた方がよいだろう。ただ、カタルーニャ以外のスペイン国民や国際社会の世論が大きく変わらない限り、カタルーニャの独立が認められる可能性は低い。そのため、最終的にカタルーニャ州政府は自治拡大を目指したスペイン政府との対話路線に傾いていくとみられる。その場合、強硬離脱派が州政府への閣外協力を取り止め、州議会選挙に発展することが予想される。

時間をかけて自治拡大へ向けた対話への移行か

最近の世論調査では現在と同様に、穏健離脱派だけで州議会の過半数の議席を確保するのは困難な状況にある。穏健離脱派が手を組む可能性があるのは、現政権と同様に強硬離脱派か、カタルーニャの独立に反対の立場を採るが、住民投票の実施に理解を示すポデモス以外に見当たらない。強硬離脱派と再び手を組めば、独立に向けた中央政府との衝突は一段とエスカレートしていく恐れがある一方、ポデモスと組めばより穏健な形で自治拡大に向けた対話を模索する展開が予想される。

カタルーニャの独立騒動が沈静化に向かうまでには、しばらく時間が掛かりそうだ。

田中 理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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