カタルーニャ独立騒動は、まだ激しさを増す スペイン政府も振り上げた拳を下ろせない

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ラホイ首相が率いる国民党政権は、新興リベラル政党の市民や国民党寄りの地域政党に支えられているが、議会の過半数を掌握していない。政権発足時は最大野党の社会労働党が投票を棄権し、その後も重要法案では野党勢の協力を仰ぎながらの綱渡りの政権運営を余儀なくされている。

今回の住民投票での政府の対応を巡っては、新興左派政党であるポデモスのイグレシアス党首が非民主的として非難を強めているほか、最大野党の社会労働党のサンチェス党首も対話の重要性を呼びかけ、政府の対応を批判している。連立与党の一角を占めるバスク地方の地域政党も、ラホイ首相の強行姿勢を批判し始めている。

与野党内の政権批判の高まりを受け、政府は住民投票直前に予定された来年度予算案の議会採決の延期を余儀なくされた。今のところ野党勢に政権を打倒する力はないが、政権の求心力低下で政治情勢が流動化する恐れがある。また、国際社会はラホイ政権の方針を支持しているものの、警察と住民の衝突を受け、ベルギーやスロベニアなど欧州連合の首脳の間からも、暴力を通じた対応に非難の声が上がっている。

カタルーニャもスペイン政府も引くに引けない

スペイン政府はこれまで、カタルーニャ州が一方的な独立に向けた動きを前進させる場合、州首相の罷免や憲法155条に基づく州政府の自治権剥奪も辞さない方針を示唆してきた。カタルーニャ州民の間には、今回の住民投票でのラホイ政権の強行姿勢を受け、1970年代まで続いたフランコ独裁政権下でのカタルーニャ弾圧の記憶と重ね合わせる論調も多い。

さらなる強行姿勢で独立封じ込めに動けば、カタルーニャ州民の独立気運に一段と火をつけ、大規模なデモや衝突に発展する恐れがあるほか、国内外から批判の声が高まりかねない。その一方で、早々に対話路線に転換したり、カタルーニャへの自治拡大を認めれば、他の自治州で燻る独立機運や自治拡大の動きを後押ししかねない。

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