希望の党、突っ走った挙句に早くも息切れ 「小池一極集中」でも矛盾は隠しきれない

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小池知事の側近である若狭勝氏は30日のテレビ番組で「民進党の政党交付金を希望の党がもらうということは絶対にない」ときっぱり述べたが、これは表向きのことを述べているにすぎない。民進党から希望の党へと資金が直接流れなくても、いったん候補者を経由してから希望の党に吸い込まれていくのであれば、結果として「民進党の政党交付金を希望の党がもらう」ことになる。

民進党を離党して小池新党に入った前職の中には、民進党を離れる前に県連にあった資金を出させて“持ち逃げ”しようとした事件もあったと聞く。これには県連の幹事長らが判子を渡さず、死守したとのこと。クリーンさを装っている希望の党だが、カネを巡る噂は尽きる様子はない。

希望の党は早くも息切れ状態

こうした矛盾がさらに露呈するのが嫌だったのだろう。小池知事は前原代表に対して、次のように打ち明けたようだ。

「若狭には『もう(テレビ)番組に出るな』と言った」

民進党全国幹事長会・選挙対策担当者会議の後に行われたブリーフィングで、党組織委員長の泉健太氏がそう明かしている。

安倍晋三首相にとって、「希望の党の混乱」は追い風だ(写真:ロイター/Toru Hanai)

衆院選投開票日まであと3週間。「安倍vs.小池」「自民党vs.希望の党」という構図での戦いになることはほぼ間違いないが、希望の党は早くも息切れを起こしているようにみえる。

たとえば、離党組のホープを自任し、民進党との窓口を買って出ていた細野豪志氏が公認選定任務を解かれてしまった。当初から小池知事の側近である若狭氏も、小池知事から全面的に任せられているとは言い難い。むしろ、細野氏や若狭氏の発言は何度も「リセット」されており、結局は小池知事に権限が集中していることが露呈している。こんな状態で、知事職と国政政党の代表を兼任できるはずもない。

その状況を逆手にとって仲間の命運を背負った前原氏が、どこまで小池氏に迫ることができるのか。まずは、前原氏の交渉能力が試される。

新幹線「のぞみ」は東京・品川駅を出ると、新横浜駅、名古屋駅、京都駅に停車してから新大阪駅に至る。名古屋と大阪の間には京都があるのだ。希望の党が先導している「3都物語」に「京都」が入っていないが、京都府第2区に無所属で打って出る予定なのが前原氏。これは「希望がのぞみになるためには、京都(前原氏)を軽視してはいけない」という暗示なのかもしれない。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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