東芝メモリ、「ようやく売却」の後に待つ茨道 サムスン電子との競争は甘くない

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東芝で14年間、NANDフラッシュメモリーの回路設計のエンジニアとして勤務した経験を持つ、竹内健・中央大学理工学部教授は今月、ロイターの取材に応じた。

1993年に入社し、フラッシュメモリーが本格的に普及する以前の時代を知る竹内教授は「赤字が続いていたフラッシュの事業を継続できたのは、東芝だったから。そうした(複合経営の)メリットはあった」と語る。

2000年代に入って大手電機各社が半導体から手を引き、日の丸半導体の退潮が顕著になっても、東芝はメモリーに注力し世界市場で健闘し、同社の経営の屋台骨を支えた。

とはいえ、電力向け機器など重電、インフラ関連を主流とみなす傾向が続いた同社では、収益貢献に見合った半導体部門幹部の処遇が実現せず、半導体技術者出身の社長登場は、2015年7月に不正会計問題の発覚で「敗戦処理」に追われた室町正志前社長までなかった。

竹内教授は当時を振り返り「1つの会社という価値観は感じなかった」と指摘する。

未知数の日米韓連合による支援

業界関係者によると、東芝のメモリー部隊は以前から本体からの独立志向が強かったという。半導体事業で勝ち残るには「技術、資金、リーダーシップの3要素が不可欠」(今回の買収交渉に関与した関係者)とされるが、この点で新たなスポンサーになる日米韓連合がどの程度、支援できるのかは不透明だ。

日米韓連合の顔ぶれのうち3要素を期待できそうなのは、メモリー事業を手掛けるSKハイニックスだけだ。

ただ、来年3月末までに売却を完了させたい東芝の事情に配慮して、各国独占禁止法の審査で問題視されるSKハイニックスによる議決権は今後10年間、15%超保有することができない取り決めとするなど、経営関与を極力薄める内容になっている。

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