邦銀のITシステムは、いまだに「貧テック」だ 顧客目線に届かない残念すぎるフィンテック

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日本はどうか。米国に遅れること10年、2014年ごろから、日本でもフィンテックブームが始まった。1990年代にも、エレクトロニックバンキングやITの拡大とともに「フィノベーション」とも称された金融電子化の波が押し寄せた。そして今回、よりイケてる「フィンテック」という言葉の上陸とともに、日本でも金融のデジタル化が本格化しつつある。

しかし、金融機関の投資は他国と比較にならないくらい小さい。日本の年間のフィンテック投資額は、ドイツの10分の1以下、米国の200分の1とされる(アクセンチュアの資料による)。これほどまでに格差が開いたのはなぜなのだろうか。

重たい設備と人手に頼る古い文化

日本では、すでに銀行口座が普及している。世界銀行によれば、世界では銀行口座を持たない人が全成人人口の38%にも上るが日本は3%にとどまる。銀行のATMも充実している。人口10万人当たりのATMの数は、世界平均では40.5台だが日本はその3倍以上の127.6台に上る 。このため日本では、銀行経由のさまざまな決済がしやすい環境にある。しかも銀行窓口の対応も丁寧だ。

また、邦銀は、既存のメインフレーム(基幹システム)が重く、動かしにくいという面もある。最近でこそ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)のように、一部のシステムをクラウドベースに置き換える銀行グループも現れ始めたが、それでもまだ邦銀は相対的に基幹システムが重いとされる。世界のメインフレーム設備の3〜4割は日本企業が保有し、その中核が銀行という時期もあった 。

しかし、それ以上に問題なのは、行内カルチャーであろう。たとえば、支店の事務員は、いまだに、書類に押された実印を印鑑証明書と照合するのに、2枚の書類を重ね、パラパラ漫画のようにマッハのようなスピードでめくって目視する。本部には照合システムがあるはずだが、顧客の前での1次確認はいまだに事務員の手ワザに頼っている。しかし、書類の印鑑レスが進めばこのような技は不要になり、ベテラン行員の優位性が失われる。現場は、IT化を望む人ばかりではないだろう。

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