外食店長「定額働かせホーダイ」の過酷な実態 人件費削減のシワ寄せをかぶる構造と風土

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「過労死ライン」を常時超える働き方が蔓延しています(写真:Graphs / PIXTA)
少子高齢化と好景気による空前の人手不足。働き方の多様化による職場コミュニケーションの複雑化――。サービス業界の中間管理職である「店長」の求められる現場マネジメント要件は構造的に高度化を余儀なくされている。本連載は、サービス業界の健全化に向け一石を投じるべく、店長受難のリアルをレポートしていく。

 

「毎朝9時に出勤して、仕事が終わって店を出るのはだいたい夜23時くらい。週2日休めることもあるけどまれ。休みはほとんど週1です」

その貴重な休日をインタビューに割いてくれた宅配系飲食店の店長Aさんは、やや疲れた表情で語ってくれました。

Aさんの月間の労働時間はざっと350時間前後

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Aさんの労働時間をざっくり計算してみましょう。1時間の休憩が取れるとして9時から23時まで働けば、1日14時間。法定労働時間を8時間として1日6時間の残業です。「休みはほとんど週1」ということですから、1カ月の出勤日は25日前後とみられます。そうすると月間の労働時間はざっと350時間前後にも及びます。

完全週休2日、1日8時間勤務で残業のいっさいない人と比較してみましょう。この場合、1カ月の出勤日は20~22日前後。月間でみると160~176時間前後となりますから、Aさんは完全週休2日、残業なしで働いている人に比べて恒常的に170~190時間以上も働いている計算です。

外食業界においてAさんは特別なケースではありません。同じような長時間労働を強いられている外食店長はごまんといます。

私が勤めるツナグ働き方研究所が今年7月に飲食業店長経験者(現職、過去経験含む)200人を対象に実施した「飲食店店長実態調査」によれば、月間240時間以上働いている飲食店店長は、通常時でも43%、繁忙期には67%に及びました。これは週休2日、残業がいっさいない人と比べて、「過労死ライン」とも言われる月80時間近い残業を強いられているのと同様です。

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