楽天が債務超過寸前のフリーテルを買う理由 大赤字の格安スマホ事業を5億円で買収

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一方のプラスワンは2012年10月に設立。端末開発と格安スマホサービスが経営の2本柱だ。

増田社長は外資系メーカーでSIMフリー端末の販売を画策したが、計画が頓挫し、プラスワンを創業した(撮影:佐野正弘)

日本初のグローバル展開する通信ベンチャーとして巨額の資金を集めてきた。2016年には米シリコンバレーや国内銀行系のベンチャーキャピタルに第三者割当増資を実施して42億円を調達。調達資金は合計80億円近くになるなど「将来有望のベンチャー」とみられてきた。「プレゼンが上手な創業者の増田薫社長が巨額資金を絶えず惹きつけてきた」(関係者)。

増資資金はスマートフォンの開発や海外展開に充当。8月下旬にはナイジェリアへの進出を発表している。アジア、北米、中南米、中東、アフリカに進出しているプラスワンにとって、ナイジェリアはアフリカで3カ国目、全世界では22カ国目となる。日本国内では2016年末に増田社長が「200店舗の出店を目指す」と明言、フリーテル専門店を増やしていた。

債務超過寸前の事業売却だった

MM総研で格安スマホを担当する平澤悠花研究員は、楽天によるプラスワンの事業買収を聞いて「やはり」と思ったという。業績が厳しいと聞いていたからだ。

積極的な拡大策の一方で国内事業が思い通りに伸びず、プラスワンの2017年3月期の売上高は100億円にとどまる一方、営業赤字は53億円、最終赤字は55億円だった。ブレークイーブン(損益分岐点)にはほど遠い状況なのである。「海外では健闘しているものの、国内では新端末で予定していた色を発売間際に中止するなど変調をきたしていた」(関係者)。

相次ぐ巨額増資にもかかわらず、先行投資がかさみ、プラスワンにはわずか14億円の純資産しか残っていない。追加の巨額増資をせずにこのまま赤字を垂れ流し続ければ、2018年3月期の債務超過転落は必至だ。

今回分割し楽天に譲渡する国内格安スマホ事業の総資産は18億円、負債合計は30億円。差し引き約12億円の債務超過である。その債務超過の事業を楽天は5億円で買収する。買収で手に入れるのは国内の顧客基盤だ。プラスワンにはスマホ開発など海外部門が主に残る見通しだ。

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