日本株は結局、11月中旬まで上昇が続く? 利益確定?儲かっている人は悩ましい局面

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日本ではなお金融緩和政策を継続中だが、そうこうしているうちに、米欧ではすでに金融政策正常化へカジを切っている。この10月には米連邦準備制度理事会(FRB)が買い入れてきた米国債等の保有資産を圧縮していくうえ、欧州中央銀行(ECB)も2018年初からの量的緩和の縮小を示唆している。世界的な金融緩和の流れが変わりつつあるなか、日本株だけが上昇するという「独歩高」は描きづらい。

もうすぐ利益確定売りの局面が到来?

さて、もうひとつの需給面も見ていこう。今回は、短期的な個人マネーの動きをはかるバロメータのひとつとして「信用評価損益率」をチェックしておきたい。信用評価損益率は、信用買い建玉を保有している投資家が、どれくらいの損益になっているのかを、パーセント(%)で表したものだ。

ここでは、以下の2つのポイントを押さえよう。

① 評価損益率 0%~-5%は「天井圏」

信用取引は手持ち資金の約3倍まで売買可能な反面、金利負担もあることから評価益の建玉は早やかに返済される傾向がみられる。そのため、評価損益率が-5%前後まで改善し、かつ日経平均株価が25日線(約1ヵ月間の買いコスト)から+5%近く上放れると、相場の天井圏になることもある。

② 評価損益率 -15~-20%超は「底値圏」

相場が大きく崩れると、信用取引をしている投資家は「追加証拠金」が発生する。投資余力のない投資家は買い建てた株の決済売りを迫られる。
したがって評価損益率が-20%前後まで悪化し、かつ日経平均株価が25日線から-5%近く下放れていると底値圏になることもある。なお、過剰流動性相場のような全面高が続くと、評価損益率がまれにプラス圏になることもある。しかし、過去を振り返ると、ほぼ相場の天井圏になっている。その後に急落局面を迎えている。足元の信用評価損益率は-9%台と若干改善している。また、日経平均株価は25日線から+3%程度上放れている。

戦後の衆院選には「解散≒株高」のパターンが多い。しかし、過去の株高の大前提として、東証1部の時価総額が大きくしぼんでいることがあげられる。足元の同時価総額はすでに626兆円(9月25日時点)に達するなか、10月の米国では緩和マネーの潮目が変わろうとしている。需給面から見ても、日本株がこのまま年末まで急騰を演じるとは想定しにくい。今後は複数のテクニカル指標にも目配りし、上記の評価損益率が-5%前後まで改善した場合、もし含み益が出ているのならば利益確定売りも検討したい。

以上のことから、2015年6月につけた「アベノミクス高値」2万0868円は手が届きそうで届かない、意外と高いハードルにも映る。「国難と高値の双方突破」は簡単ではなさそうだ。もし抜いたとしても、年内には再び調整局面があるかもしれない。

さて、私が所属している非営利の団体・日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)では「テクニカル分析について学びたい」という読者の方々のために、ボリンジャーバンドの開発者であるジョン・ボリンジャー氏を東京と大阪にお招きし、セミナーを開催いたします(11月18日(土)東京予定、25日(土)大阪予定)。

もちろん、日本語の通訳もつきます。ボリンジャー氏が自ら開発した「武器」を使って日本株を分析すると、どのように映るのでしょうか?今後は上昇でしょうか、それとも下落でしょうか。今後の相場予測にも役立つと思いますので、ぜひこちらからお申し込みください。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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