業績比較を容易にする保険契約の新会計基準

保険契約の経済価値を3つの要素で測定

国際会計基準審議会(IASB)による国際財務報告基準(IFRS)第17号「保険契約」の公表は、日本の保険会計を抜本的に変える可能性がある。ただ、負荷の大きさから導入に迷う企業も少なくない。国際的な会計事務所グループのKPMG/あずさ監査法人に悩める企業を解決に導くポイントを聞いた。

IFRSの保険契約プロジェクトは、1997年にスタートし、2004年にIFRS第4号「保険契約」が公表された。この時点では、実務への負荷や混乱を避ける目的から、基本的に各国のローカルな会計処理を認める暫定的な内容となっていた。その後、10年の公開草案、13年の再公開草案を経て、17年5月についにIFRS第17号「保険契約」の最終基準が公表された。

保険契約に関する従来のIFRS基準であるIFRS第4号は、法域間や商品間での会計上の取り扱いの相違により、投資家やアナリストが保険会社の業績を比較することが難しいという課題を抱えていた。

三輪 登信氏
金融事業部保険インダストリーヘッド
パートナー

「保険契約プロジェクトの目的は、国ごとにばらばらで比較が難しい保険契約の会計処理を統一し、投資家に対して財務業績をわかりやすく比較しやすいものにすることです。そのための有用な情報の提供が、新しい会計モデルの理念です」と、KPMG/あずさ監査法人金融事業部保険インダストリーのカントリーヘッド パートナーの三輪登信氏は説明する。

有用な情報を提供するために、保険契約の時価に相当する「保険契約の経済価値」を測定することで、情報を定期的に更新する。具体的には、次の3つのフィルターを用いる。1つ目は、「ビルディング・ブロック手法」だ。保険負債を複数の測定要素(ブロック)に分割し、それぞれの評価額を累積することで、より明確な保険負債を定義する。2つ目が、「ロックフリー」の採用。通常、保険負債は、将来保険事故が起こる可能性を見込んで測定するが、その前提条件は刻々と変化する。こうした情報を決算期ごとに更新することで、評価時点での実勢を反映した価値で保険負債を示すことができる。

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