ヤクルト真中監督が退任を決めた本当の理由 「誰がやっても勝てない」という意味ではない

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つまり、「僕の能力では、来シーズンも勝つ自信がない」という意味であり、「そんな人物が監督をやってはいけない」という思いを込めてお話をさせていただいたのです。もちろん、チームにはさまざまな課題、問題点があります。新たな監督とともに、チーム全体の改善、改革も必要になってくることでしょう。それは、新監督と球団とが考えることであり、去り行く僕が口にすべきことではありません。

シーズン途中に「できない理由」が見つかってしまった

2015年、就任1年目でセ・リーグ優勝を実現したその後、僕は『できない理由を探すな!』(ベースボール・マガジン社)という本を出版しました。これは、僕の座右の銘でもあるのですが、とは言え、今年に関してはシーズン途中に「できない理由」が見つかってしまいました。つまり、シーズン途中ですでに「優勝は厳しいな」と僕自身が考えてしまったのです。監督自身が「優勝は難しいな」と考えているのに、選手たちに「できない理由を探すな。優勝を目指せ」と言うことはできません。これもまた、退任決意の大きな理由です。

自分から「できない理由」を探すことはしなくても、結果的に「できない理由」が見つかってしまった場合、それでもペナントレースから逃げ出すわけにはいきません。ならば、できないならできないなりに、何か打開策を考える必要があります。それが、「ライアン小川のクローザー転向」でした。今シーズンで言えば、「優勝する」という目標に関しては「できない理由」が見つかってしまいました。そこで僕は「何か来季につながることをしよう」と新たな目標を作りました。

それは、具体的に言えば「若手の育成」ですが、まだまだこちらの期待以上に成長してくれたという実感のないまま、僕はチームから去ることになりました。マスコミの方たちからは、「志半ばでチームを去る心境は?」とインタビューをされました。しかし、正直なことを言えば、僕は「志半ばだ」とは思っていません。自分の中で、「もうこれ以上は何もできないな」と思えるほど、さまざまなことを考え、策を講じたからです。

結果的にチームは歴史的な惨敗を喫し、選手たちにも、ファンの人たちにも悔しい思いを経験させてしまいました。それでも、ケガ人が続出した今季、残されたメンバーをフル活用し、さまざまな手を打ったという自負はあります。スタメンオーダーには毎日、頭を悩ませました。「このラインナップ以上のオーダーはもう組めない」という考えの下、日々のメンバーを組んでいました。これが、僕の能力の限界なのかもしれません。そういう意味では、「やり切ったな」という思いでいっぱいです。

最初に述べたように、まだシーズンは終わっていません。これから少しでも、来季につながるような戦いを続けていくつもりです。最後の最後まで全力を尽くして戦います。どうぞ、最後までご声援をお願いいたします。

(取材協力:長谷川 晶一)

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アルファポリスビジネス編集部

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