10月以降の米国経済、「嵐を呼ぶ男」に注意 長期金利上昇は続かず、ハリケーンは続く

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ハリケーン「イルマ」の被災者と話をするトランプ大統領、メラニア夫人とペンス副大統領。お騒がせ大統領もハリケーンへの対処ではこれまでのところ得点を稼いでいるようだ(写真:AP/アフロ)

9月19~20日開催のFOMC(米国連邦公開市場委員会)では、再投資政策の縮小を10月から開始することを決定した。また筆者の予想どおり、FRB(米国連邦準備制度理事会)が金融政策の正常化を早めに進めたい意向は変わっていなかった。2017年末の政策金利見通し(中央値)が1.375%で維持されたことで、市場は12月利上げを意識し、米10年債は一時2.29%、ドル円も一時112円台後半まで上昇、NYダウは金融株の押し上げで20日に最高値を更新した。

FRB正常化でも、金利の天井は低くなった

市場はFRBの目先のタカ派姿勢に反応したが、今回のFRBが発信した重要なメッセージは、足元の物価伸び悩みを踏まえ、(1)2017~2018年のコアPCEデフレータ(個人支出関連のインフレ率を示す)を下方修正したこと(2018年以降は2%近辺で安定推移との見方は変えず)、(2)政策金利見通しで、長期水準の中央値を2.750%(6月時3.000%)に引き下げたことだ。

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(1)では、ジャネット・イエレン議長が会見で「現在の2%を下回っている物価はミステリーだ」と述べ、納得できる物価停滞の理由が見当たらないことへの苦悩が垣間見られた。(2)では、潜在成長率低下のもと、完全雇用に近づいても賃金が伸び悩む状況が続き、政策金利の上げ余地も限られるとの認識がわかった。

FF金利の最終地点が2.750%なら、仮に12月利上げが実施されれば1.500%となり、25bpの利上げをあと5回すれば到達できる。焦ることなく、ゆっくりペース(年2回程度)でよい。2018年の利上げ予想は、今後下方修正されていく可能性が高いだろう。この2つのメッセージを踏まえれば、米10年債の金利上昇は長続きしないだろう。2%台後半の定着は難しそうだ。

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