「寝る前の化粧落とし」を頑張るのは間違いだ その習慣が肌をどんどん壊している

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しかし単純に細胞を積み重ねただけでは、弱すぎて外界からの攻撃に耐えられません。そこで肌の細胞はスクラムをがっちり組んで、外界(表面)に向かって前進していきます。そして外界が近づいてくると、自らを大きく薄っぺらい膜に変身させます。皮膚表面の硬い壁=角質の原料となるべく、ミルフィーユ状に薄く平たく、15くらいの層に積み重なってゆくのです。

肌には自らを潤すシステムが整っている

肌(表皮)は、細胞内にも細胞間脂質にもオリジナルの保湿成分を持っています(イラスト:庄司猛)

このとき細胞膜のすぐ内側で裏打ちしていたたんぱく質が、細胞を守り水分の喪失を防ぐ、バリアの役割を担う強靭な膜=周辺帯を形成します。

いっぽうで角質細胞内のケラチンやフィラグリンという物質は、自己消化により天然保湿因子となり、水分を保持する働きを持つようになります。つまり“オリジナル”のうるおい成分のひとつです。

平たくなるとき細胞は、細胞膜から成分を放出します。放出された脂質やセラミドなどは結合して細胞間脂質になり、細胞と細胞の隙間を埋めます。角質細胞をレンガに例えると、細胞間脂質は隙間を埋めるセメントの役割を果たすもの。細胞間脂質には水分の蒸発を防いだり、外部からの刺激や侵入を防いだりするバリア機能があります。また、水となじみやすい構造を持ち、高い保湿機能があります。

このように肌(表皮)は、細胞内にも細胞間脂質にもオリジナルの保湿成分を持っています。いっぽうで肌の表面では、毛穴から補充される皮脂と、汗として放出される水分が一緒になり、自らを潤すシステムが整っているのです。

最終的に、一番表面にたどり着いた細胞は、垢となって剥がれ落ち、その役割をまっとうします。皮膚細胞は生まれてから死ぬまで、およそ45~55日。中身を出しきりペラペラの垢になって落ちるときには、生まれたての細胞の約50倍の大きさまで広がっています。肌は常にこの循環を繰り返しています。これをターンオーバー(新陳代謝)といいます。ターンオーバーが正常に行われていれば、肌の健康は保たれます。逆にこの循環が壊れたときに、肌トラブルは起こるのです。

みなさんが毎晩せっせとお化粧を落とすためにやっているクレンジングは、このターンオーバーを狂わせてしまうのです。肌にとっていちばん危険なのです。

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