ハイテク時代に必要な国際的な金融規制とは−−ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

現在の国際金融危機の拡大は、「金融至上主義(フィナンシャル・トライアンファリズム)」の終焉を意味するのであろうか。一般の人に現代の世界を動かしている最も重要な10のイノベーションは何だと尋ねたら、おそらくオプション価格決定のブラック・ショールズ理論を挙げる人はいないだろう。しかし、金融業界では、現代のヘッジ戦略に道を開いたパイオニア的な理論は、コンピュータ、インターネットと同じように世界経済の急速な成長の時代を作り出したと高く評価されている。

1年前まで金融イノベーションを擁護する人々は、十分な論拠を持っていた。ハイテク金融は、リスクを分散することで急速な経済成長の達成を支援することができた。マクロ経済学者は、世界の景気循環が穏やかになった“大いなる安定の時代”の到来を祝福した。

政府も金融イノベーションの応援団であった。米国や英国の大統領や首相、中央銀行総裁は、世界がうらやむほどの卓越した金融制度を自慢していた。フランスとドイツの指導者が新しい金融手法の無規制な拡大は世界経済に非常に大きなリスクとなると警告したとき、彼らは嘲笑され、無視された。アイスランドのような小国でも銀行を民営化し、金融センターを設置して分け前にあずかろうとした。しかしシリコンバレーにさえなれないのに、どうして小さなウォール街になることができるのであろうか。現在、アイスランドの銀行はGDPの何倍もの借金を抱え深刻な危機に陥っている。その債務総額は小さな国の国民の税金では吸収できないほどの額になっている。慎重なスイスでさえ、ハイテク金融とそれが生み出す富の誘惑に屈してしまった。現在、二つのスイスの大手銀行が国の所得の7倍もの債務を抱えて破綻の淵に立たされている。

そんな中で最大の救済例は、米国政府が住宅金融会社ファニーメイとフレディーマックに与えた白地手形である。両社は現在5兆ドルの住宅ローン債務を抱え、その額はさらに膨れる可能性もある。皮肉なのは、金融至上主義の権化であるゴールドマン・サックスの前CEOだったポールソン米財務長官が、時代遅れとなった政府支援による
企業救済の音頭をとっていることだ。

ブームの時に警鐘を鳴らす難しさ

金融分野の発展は世界の成長を高める好ましい影響をもたらした。しかし、その発展には皮肉な要素があった。住宅価格が上昇していたときは、住宅金融を支える天才たちは絶対間違いを犯さないと思われていた。しかし、住宅価格が下落し始めた今、天才たちの戦略はそれほど優れたものとは思えなくなっている。

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