ブルーボトルが「ネスレ」を選んだ決定的理由 来日した創業者とCEOに直撃!

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――カイゼンとは日本的ですね。

フリーマン:ブルーボトルの米国事業は日本からものすごい影響を受けている。日本人は、何かを改善することにおいてはいいやり方を知っている。

米国の企業が日本に進出する際、多くはほかの企業と組んだりするが、私とブライアンは合弁など作らずに、単独で進出することにこだわった。そうすることで、ブルーボトルにとって日本が最も「強い」エリアになると考えたからだ。そして実際、東京での事業はとてもうまくいっていて、東京でのやり方を米国で試すということも行われている。

――デジタル面にも投資するとしています。

井川沙紀:日本のECサイトはメインサイトとは別にやっていて、実験的に第三者のパートナーと組んでいろいろ試してみている。一方、米国では2015年にECサイトを買収していて、サイトのデザインや使い勝手向上などに投資をしてきた。これまでは、ブルーボトルのことを知っている人、家でコーヒーを入れる人をターゲットにしてきたが、今後はより多くの人にリーチできるように教育的なコンテンツをやってみたり、ロイヤルティプログラムのようなものがあってもいいと思っている。

ネスレにとっては「取るに足らない」事業

――韓国や中国に出店する計画は。

フリーマン:可能性としてはあるだろう。日本以外だと、ブルーボトルのファンは、韓国や台湾、シンガポール、中国に多い。ブルーボトルの人気はアジアで非常に高い。いずれにしても、ブルーボトルの出店のフォーカスは、パリやジュネーブといった欧州の都市ではなくて、アジアの都市になるだろう。

――今後、ネスレと共同で商品開発などを行う可能性は。

フリーマン:そういうプレッシャーはないが、意味のあるコラボレーションについてはオープンに考えている。ただ、たとえばネスプレッソで協業するとか、そういった圧力はネスレ側からはかかっていない。彼らは、ブルーボトルのイメージが「薄まる」ようなことはしたくないと考えているんだ。

――ネスレは上場企業ですが、ネスレが出資することによって、今後ブルーボトルの財務情報が開示されることは。

ミーハン:ありがたいことにそれはない。ネスレは非常に大きな企業なので、ブルーボトルはネスレにとって少なくとも業績面ではimmaterial(取るに足らない)ととらえられるからだ。取るに足らないと言われて嬉しかったのは初めてのことだね。

――2002年にブルーボトルを始めてから15年が立ちますが、ネスレの投資も含めてこういう日が来ると思っていましたか。

フリーマン:まったく想像できなかった。ファーマーズマーケットでコーヒーを出すというキャリアに満足していたからね。ただ、新しいことに挑戦したり、変化を経験するのは面白いことだ。

――聞いていると、ブルーボトルにとってずいぶん条件のいい取引です。

フリーマン:今回の件については、ブライアンが1人で世界一の食品会社と対峙して、ブルーボトルで働く約800人のために望ましい条件になるようにまとめてくれた。今回は私たち全員にとって有益な取引になったと思う。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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