ブルーボトルが「ネスレ」を選んだ決定的理由 来日した創業者とCEOに直撃!

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――出資はすぐ決まったのですか。

今後もブルーボトルの経営陣は変わらない(写真:今井康一)

ミーハン:シュナイダーCEOから電話をもらったのは2月で、その後、ブルックリンにある焙煎所に招いた。そこからカフェを見てもらったりして1日一緒に過ごした。一緒にランチをしたときには、ブルーボトルはとてもスペシャルな会社だとわかってくれたようだ。

――出資先を探していなかったにもかかわらず、ネスレに決めた理由は。68%というのはかなり大型の出資です。

ミーハン:200人以上の投資家とやり取りするより、1社だけとやり取りするほうが楽だ。ブルーボトルは今後成長を考えるうえで、株式公開するという道もあった。しかし、(米ハンバーガーチェーンの)シェイクシャックも最近上場したが、株式公開するということは自分の会社をコントロールしにくくなるということだ。

252人の投資家が1社に変わった

一方、ネスレとの契約では、彼らが私たちの何を支援するか、また何を支援しないか、というのをブルーボトルが決めることができる。こういう提携において「何について支援しないか、協業しないか」を決められることは最も重要なことだ。

上場した場合、誰が投資しているのかもわからないし、四半期決算を出さないといけないから、より短期的な視野で利益を出すことを求められるようになる。質の高いコーヒー、すばらしい顧客体験よりも、利益を出さないといけないかもしれないということだ。私たちにとっては、長期的視野に立って、いいコーヒーと顧客体験を提供することだけに集中できる投資家がいるほうが望ましい。

――今後、ネスレが出資を増やす可能性は。

フリーマン:それはある。68%という数字は、私やブライアン以外の投資家が持っていた持株比率で、それをすべてネスレに譲渡したから68%になった。つまり、252人の投資家が1社に変わったわけだ。これでずいぶんシンプルになった。もちろん、過去の投資家たちも、ネスレに株式を譲渡したことを喜んでいるし、私たちもブルーボトルがここまでになるのを支えてくれた投資家に感謝している。彼らが私たちのビジネスに口を出すことは一切なかったから。

ミーハン:将来的にネスレが出資額を増やすこともあるという契約を結んでいるが、出資比率は68%を維持したままとなる。将来を考えたときに、これはブルーボトルにとっては、とても魅力的な取引だ。特に日本での事業を考えた場合は。昨日も沙紀と、今後日本のどこの施設や設備に投資し、どの都市でビジネスをするかという話をしていたところだ。

――残りの32%は誰が持つことになるんですか。

ミーハン:ジェームス、沙紀、私などブルーボトルの経営陣だ。

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