「歩行支援ロボット」の最新技術が凄すぎる

「寝たきり」となった人への光明

確かに、現時点では機器の装着に時間と手間がかかる。また身長が高い人など、体格によっては正しい姿勢で装着できない場合があることも課題だ。

アクティブ歩行器を開発した小林教授。歩行困難者ができる限り自立した生活を行えるよう、ロボット技術を通じてサポートしたいという(撮影:梅谷秀司)

「どんな人でも利用できるよう、さまざまなレパートリーの機器を開発する」(小林教授)のが今後の目標だ。しかし、向井さんをはじめとして、「今のままでいいから自宅に置きたい」という人も多い。訓練しないことによる機能低下というリスクと、日々戦っているからだ。そして価格という障壁も立ちはだかってくる。現在は試作品として、メーカーに1台1台特注しているため、原価だけでも100万円程度かかってしまう。

現在小林教授の研究室には、月に延べ20名程度の方が治験に訪れるほか、他県からの希望者が多い場合、出張する場合もある。治験に要する時間は一人あたり30分から1時間。学生をアシスタントに、研究の範囲内で行っているため、時間および費用の限界がある。障害者家族の会などの口コミで治験を希望する人も多くなっており、今がほぼフル稼働に近い状態だ。

実は小林教授は、アクティブ歩行器にも採用されている人工筋肉を使った介護支援型ロボットをすでに開発、大学発ベンチャーのイノフィスを通じ、「マッスルスーツ」という商品名で2014年に発売している。介護者支援のほか工事や農業など用途が広く、累計3000台を販売。試作段階の半額程度の約60万円という価格で販売できているそうだ。

困難を抱える人にとっては「希望の星」

アクティブ歩行器も、家庭で使える機器として実用化できればもっとコストを低く抑えることは可能だろう。しかし、「商業ベースでは実用化にはまだ時間がかかる」と小林教授は考えている。

「マッスルスーツも、もともとは、“動けない人が動けるようになる”自立支援型を目指したものですが、開発時、福祉の業界からは注目されませんでした。メーカーからすれば、安全面の評価基準が厳しく、行政の許認可が下りないため、実用化が難しいというのが理由です。その意味では、アクティブ歩行器も同様です」(小林教授)

よって、小林教授は2つのルートによってアクティブ歩行器を広めていきたいという。1つは、「今すぐにでも欲しい」という人に向け、原価に近い価格で販売する方法。もう1つは、地方自治体などに買い取ってもらい、より多くの人が利用できる環境を整えていく方法だ。それらを行うためのNPO法人の立ち上げも進めているという。

このようにまだ多くの課題があるアクティブ歩行器。しかし、困難を抱える人にとって「希望の星」(向井さん)であることに間違いはない。現時点では、すべてが小林教授一人にかかっている。まずは環境面の整備が急がれる。

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