時代錯誤の「労働搾取」に若者が負けない秘策 無意味な「滅私奉公」を求める上司は無視せよ

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そうした会社からの悪意なき搾取を社員が受け続けた成れの果てが、世界139カ国中132位の「やる気後進国ニッポン」なのである。この搾取構造から早いところ抜け出さないと、本当にマズイことになる。では、どうしたらこの「搾取構造」から脱出することが可能になるのか。その唯一の解が「滅私奉公」から「活私奉公」へのシフトである。

「御恩」なき時代においては、「滅私奉公」が単なる搾取と成り果て、やる気のない社員を量産してしまうことは先に述べたとおりだ。ただ、「奉公」すること自体はまったく悪いことではない。自らの「よく生きたい」という私利私欲の一切を滅して、会社に人生を預けてしまうことが悪いのであって、「奉公」する個人を増やすことは、社会をよりよくしていくためには必要だ。

「奉公」は、お上のために身を捧げて働くこと、と解釈されるが、現代の社会の枠組みから考えると社会のために貢献すること、と解釈したほうが時代に合っているだろう。企業は、ごく一部を除いて終身雇用、年功賃金という恩恵を社員に与えることが難しい。個人が生涯を捧げて貢献する対象というよりかは、社会の装置の一部としての役割しかないと考えることが自然だ。

「活私奉公」型の働き方へシフトさせるために

では、どうしたら「滅私奉公」型の働き方から、「活私奉公」型の働き方へとシフトできるのだろうか。エンゲージメントを高めるために、海外の研究では次の5つの「E」が重要だといわれている。

1つ目の「E」は、Enablement(イネーブルメント)。つまり「強みを活かす」ことだ。今の仕事では、自分自身の強みを十分に活かせているだろうか? そもそも、自分自身の強みをきちんと自覚できているだろうか? まずは自分自身の強みをきちんと把握し、できることを増やすことが「活私奉公」型の働き方へシフトさせるためには必要だ。

2つ目はEncouragement(エンカレッジメント)。エンゲージメントを高めるためには、勇気づけや励ましのコミュニケーションが必要だ。しかし、伝統的な企業を中心に、いまだに叱咤や叱責といった真逆のアプローチしかできない上司が多い。「そんな上司はクビにしてしまえ」と思ったところで、なかなかそうもいかないのが企業社会の現実だ。そういう場合は、自分自身の存在価値を認め、承認してくれるコミュニティに身を置いてみるのも一考だろう。

3つ目はEmpowerment(エンパワーメント)。自分で意思決定し、行動できる能力のことを指す。「滅私奉公」型の会社にいるとどうしても、「他人に言われたことだけをやる」という働き方をしてしまいがちだが、「活私奉公」型の働き方にシフトさせるためには、「自ら考え、自ら決断し、自ら行動する」というエンパワーメント型の仕事のスタンスが必要となる。会社員である以上、すべての業務において自分で意思決定し、行動することは難しいかもしれないが、上司に指示されたことであっても「本当にそうだろうか?」とまずは自分のアタマで考えてみることが重要だ。

4つ目は、Energy(エネルギー)だ。エネルギーを高い次元に保つためには、当たり前だがよく食べ、よく動き、よく眠ることが重要だ。OECDが2014年にまとめた調査によれば、日本人の睡眠時間は1日平均7時間43分で、OECDの25カ国中ワースト2位だったそうだ。「腹が減っては戦はできぬ」とはよく言ったものだが、十分なエネルギーなくして、よい仕事はできない。

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