インド中銀新総裁は救世主になれるのか 元IMFチーフエコノミストがインドの難局に挑む

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(写真:ロイター/アフロ)

それは嵐の中の船出となりそうだ。9月5日、インド中央銀行の新総裁に、同国財務省の主任経済顧問でシカゴ大学教授のラグラム・ラジャン氏が就く。

ラジャン氏は世界の金融業界で名の知れ渡った存在だ。シカゴ大学で長く銀行論と金融論を教え、2003年には米国ファイナンス協会から、金融の理論と実践に最も貢献した人物に贈られるフィッシャー・ブラック賞を受賞。同年、40歳の若さでIMF(国際通貨基金)のチーフエコノミストに就任した。

05年には「金融の発展は世界をよりリスキーにしたか?」と題した講演を米国で行い、金融危機を事前に警告。インドでは金融部門改革委員会の議長を務め、リーマンショック後は、シン首相の経済顧問にも就いていた。

契機はバーナンキ発言

輝かしい経歴を引っ提げてセントラルバンカーに転身するラジャン氏だが、行く手には困難が待ち受ける。インド経済は通貨安・債券安・株安のトリプル安に見舞われている。

トリプル安の直接のきっかけは、5月に米FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が、金融緩和の縮小を示唆したことだった。これを受けて、新興国へ流れ込んでいたリスクマネーの動きが逆転、インドやブラジル、インドネシアなど複数の新興国で通貨安や株安を招いた。

インド中央銀行は7月末に出した年次報告書の中で、バーナンキ発言から7月半ばまでに外国人機関投資家が債券と株式で合計約100億ドル売り越したと記している。インドルピーは5月の1ドル=50ルピー台半ばから8月下旬には一時、過去最安値となる68ルピーをつけた。

このタイミングでの通貨安はインドにとって頭が痛い。

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