日本株は解散総選挙後も上昇を維持できるか 9月は堅調推移でも、高すぎる米国の株価

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米国の財政審議は、一部でささやかれた「9月危機」は回避された。すなわち、連邦債務上限の引き上げや、暫定予算の策定を9月中に行う必要があったが、ハリケーン「ハービー」の被害に財政面で対応することが急務として「上限引き上げや予算でもめている場合ではない」との認識が、議会与野党と大統領府の間で広がった。このため、12月8日(金)までの上限引き上げと暫定予算が急きょ決定された。

「9月危機」は回避されたが、3カ月先送りされただけ

しかしこれは、見方によっては、問題を3カ月先送りしただけとも言える。12月には、再度の対応が必要となる。

加えて、12月上旬までに再度の策定が必要な暫定予算については、メキシコとの壁の建設を巡って、情勢が二転三転している。当初トランプ大統領は、「9月中に策定する最初の暫定予算に壁の予算を盛り込め。もし、それを巡って議会が紛糾し、暫定予算が策定できなくなって、政府機関が閉鎖されるような事態になっても構わない」といった、強硬な姿勢を示していた。しかしその直後に、大統領府から議会に対して、「9月時点の暫定予算に盛り込む必要はないが、12月までに検討する予算には盛り込んでほしい」との要請があったと報じられた。この場合、壁の建設自体に反対する議員も多いため、次回の暫定予算の審議は難航すると懸念されたわけだ。

ところが先週は、大統領と民主党の間で、夕食を交えた会合が行われ、「壁の建設は断念することで合意した」という報道がなされた。そうであれば、12月を前にした、暫定予算の審議に対する懸念は薄らいだはずだが、もともと壁の建設はトランプ大統領の公約であり、その点を評価して選挙で投票した層もいるはずだ(筆者は、壁の建設は好ましいことだとは考えないが)。支持者の離反を招きかねない方向へ大統領が進むというのも見込みにくく、実際大統領は、壁の建設は断念したのではなく先送りするだけで、民主党と合意したという事実はない、と語っている。

今後も壁を巡って、(ほかの政策についても同様だが)大統領の姿勢は何度でも変化しそうだが、上記の夕食会合が民主党との間で行われた、という点は気にかかる。というのは、ハリケーンへの対応を受けた、債務上限引き上げについては、与党共和党は、来年11月の中間選挙までの期間を要望していた。その案を蹴って、民主党が提案した3カ月分の引き上げを大統領が採用した形だ。

こうした、大統領と民主党の接近については、さまざまな憶測を呼んでおり、またどちらの党にも偏らない、独立の大統領だと持ち上げる論評も目にする。しかし、上下院ともに多数を占める共和党との関係が悪化すれば、今後予算化する必要がある、トランプ大統領の経済政策、すなわち減税やインフラ投資については、協議が難航し、かなりの規模の縮小や、断念を余儀なくされるのではないか、と見込まれる。そうした展開となれば、米国株の買われすぎが、大幅な株価下落という形で解消され、米ドル相場も対円で押し下げることになるだろう。

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