au「三太郎」CMが3年目でも飽きられない理由 ディレクターの子ども時代にキャラの原点

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【11~30位】

12位にも『au』の三太郎シリーズから「時を超える声」篇がランクインした。サッカーをしている子どもたちを見かけた鬼ちゃん役の菅田将暉が「♪どうしてそんなに走れるの」と歌いだす。すると歌声は時空を超えて、いつの間にか現代のサッカースタジアムへ。ピッチの中央に立った菅田の歌声と日本代表選手たちの映像が重なる。アンケートモニターからは、「歌がすごいうまい」「菅田将暉の歌、熱唱している姿がいい」と菅田の歌唱が高く評価された。「全力を全力で応援する、それができるって素敵だな」とキーコピーもしっかりと伝わったようだ。

8月31日のW杯アジア最終予選の日には、60秒の特別バージョンが放送された。勝てばW杯出場が決まる大一番、オーストラリア戦の開始直前に、30秒CMにはない「♪日本の風に背中押されて、日本の太陽に未来照らされて」の歌詞と日本代表が戦う姿がシンクロし、「♪泥くさくていい、カッコ悪くていい」と力を込めて歌う菅田のアップが、サポーターたちの「ニッポン、ニッポン」の声援と重なる。選手へ、サポーターへ、日本へ声援を送るかのような映像と音楽が最高のタイミングで放送された。まるでこの日のためのCMであるように。

「同じテレビでも視聴の仕方や気分によって伝わる深度が変わる。時期や番組の特徴に見合ったCMを流す工夫をしている」(矢野氏)。試合後はWeb動画の再生回数を急速に伸ばしていることも反響の証しといえよう。

ワールドカップ予選、キリンが生中継「祝杯」CMも

ちなみに、1対0で前半終了後、ハーフタイムのCMは、各社が工夫を凝らしたCMを放送していた。ホンダはONE OK ROCKと庵野秀明がコラボしたメッセージ性の高いCMを放送。LINEはクラウドAIプラットフォーム「Clova」を搭載したスピーカーで家族の新しいコミュニケーションの形を描いた。当日のリアルな試合結果「前半、1対0」をCMの中でAIが話し、まるで未来予測のような仕掛けに驚かされた。Netflixは明石家さんまがテレビについてインタビューで本音を語り、トヨタは佐藤健を助手席に乗せた豊田章男社長がハンドルを握り、SUBARUの車でドリフト走行テクニックを見せるなど、見ごたえのある映像が次々と放送された。

2対0で日本が勝利した試合終了直後には、キリンが生中継のCMを放送。香川照之と元日本代表の岡野雅行、川口能活が登場し、テレビの前から祝杯の音頭をとった。引き分けや敗戦の場合は放送しないという試合結果連動生CMだった。

スポーツは筋書きのないドラマで、勝敗は今のところ予測できない。スポンサー企業はそうしたリスクと向き合いながら、スポーツがもつリアルで強いパワー、人の心を動かすコンテンツを期待する。全米スーパーボウルに見られるように、注目度の高いスポーツコンテンツの合間に放送されるCMには、これまで以上に熱い視線が集まりそうだ。今後意識するのは視聴率から視聴質、その次は視聴深、なのかもしれない。

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