【永守重信氏・講演】経営戦略としてのM&A(その7)

一橋ビジネスレビュー・フォーラム
「経営戦略としてのM&A~マネーゲームから国際競争力へ」より
講師:永守重信
08年7月23日 六本木アカデミーヒルズ(東京)

その6より続き)

●最大の買収防衛策

 わが社は買収防衛策を一切導入しません。そこで最大の買収防衛策は何かと言ったら、それは「高成長・高収益・高株価」です。時価総額を上げることが最大の防衛策です。解散価値の半分ぐらいの株価で買収防衛策を入れて何とか防ごうかと思ってもこれは厳しいです。高成長・高収益・高株価の3Kと我々は言っているのですが、この3Kをいかに実現したらいいのかということを真剣に考えて、毎日の経営をしています。

 今まで譲っていただいた27社の中で海外の会社はアメリカが1社、最近ではフランスの会社、それからシンガポールの会社があります。国内と海外とどう違うのかというと、海外の方が少し余計に時間がかかります。やはりフランスに毎週行くわけにはいきませんし、それから言葉も違います。フランス語なら通訳を通して話さないといけないので、心を伝えるには余計に時間かかるということです。
今の平均でいきますと、日本の会社なら1年で再建できるところをアジアの会社は2年、ヨーロッパは3年、一番かかるのはアメリカで5年。だから、アメリカの会社を買うのは気をつけた方がいいですね。心を通じるには相当時間がかかります。先ほどのろくにボーナス貰わなくても、辞めない社員に「なぜ?」と聞いたら、「私はこの会社が好きなんです」という、そんな人はいませんからね。

 ですから、M&Aの対象はヨーロッパの企業まで。それなら非常に短期で再建できる。いい会社を譲ってもらったら別なのですが、業績の悪い会社を譲ってもらったときの再建期間というのは、長くなるとリスクが高いです。やはり日本、アジア、ヨーロッパぐらいまでが1つの対象になってきます。アメリカにもいい会社があるとは思いますが、特に再建が伴う場合はリスクが高いです。

 わが社の時価総額は最近若干の上がり下がりはあるものの、1兆5000億円ぐらいまでいっています。この会社の価値を今からもっと上げていくということです。そういった意味においては自力で50%、それからM&Aで50%という形で、これからもその線を守りながら自力でやってきた実績を基にして、新しい仲間に参加していただく。そしてその参加していただいた会社にも1つの大きな恩恵と言いますか、いい結果を出していければと思っています。
(終)
永守重信(ながもり・しげのぶ)
1944年、京都府に生まれる。
職業訓練大学校電気科を卒業後、技術者を経て28歳の1973年に日本電産株式会社を創立。現代表取締役社長。
1980年代より積極的なM&A戦略を展開し、精密小型モータ開発・製造をコア事業として140のグループ会社を擁する企業へと発展させた。著書に『 奇跡の人材育成法』『情熱・熱意・執念の経営』(PHP研究所刊)ほか多数。
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