「北朝鮮危機」、米海軍の元高官が語る核心 戦争勃発の可能性は5→10%に高まった

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そのほかの軍事対応に関しては、アメリカは、航空防衛においても、海洋協力においても、韓国と日本と連携してできるかぎりのことをしなくてはならない。空と海での協力によって、すでに朝鮮半島に配備されたアメリカ地上軍に加え、北朝鮮に対して抑止効果を及ぼすことができる。北朝鮮や、北朝鮮が引き起こす危険に備えた大規模な合同軍事演習を毎年実施することには意味があるだろう。サイバー演習も同様に行われなくてはならない。

経済、軍事、外交における断固たる集団行動が必要

最後に、北朝鮮のもたらす危機にどれほどいらだちを感じるとしても、私たちは北朝鮮とのオープンな対話の手段を維持するために、できるかぎりの努力をする必要がある。実りある対話の可能性は低いとしても、対話にオープンな姿勢を崩すべきではない。

ただし、北朝鮮のいつもの手に落ちないように気をつけなくてはならない。悪行、交渉、食糧や燃料を得るための譲歩、制裁、それでも結局は行動を変えないという手口には、いつもながら気が重くなる。時間をかけた中国との協力が功を奏する可能性がある。中国の取り組みと経済的圧力がなければ、どのような交渉も実らないだろう。

金正恩を嘲笑したパロディ映画『ザ・インタビュー』のように、太った若い指導者を笑いものにするのは簡単だ。製作者のソニー・ピクチャーズはこの映画によってサイバー攻撃を受けた。しかし、彼がこの地域に危機をもたらす存在であるのは確かだ。世界経済の中心である東アジアが大きな危機に見舞われないためには、経済、軍事、外交における断固たる集団行動が必要だろう。

だからこそ、アメリカ海軍史上最大規模、最も強力な第7艦隊がこの海域に配備されている。イージス艦の対ミサイル技術、巡洋艦のプレゼンス(少なくとも2隻必要であり、1隻は日本に常駐、ほかは太平洋を巡航する)、強力な海兵隊(沖縄とグアム)、中国を抑止するための三元戦略で最も有効な戦力としての潜水艦発射弾道ミサイル、強力な特殊部隊とサイバー支援を含む最新の兵器システムが必要だろう。

第7艦隊は、この地域でわが国の最も強力な同盟国である日本に今後も旗艦を置くのが望ましい。太平洋には複数の基地が必要だろう。中心となる基地は日本の本土、沖縄、朝鮮半島にある。さらに、フィリピン(議会はスービック湾にあった軍事基地の復活を認める用意があるようだ)、北オーストラリア(おそらくダーウィン)、そしていずれはベトナムに簡便な離着陸予定地域を設けるための合意を得る必要がある。シンガポールの基地へのアクセスも不可欠であり、この国との防衛協力は極めて密接だ。

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