ヴィトンがスマートウォッチに参入した意味 若者世代を取り込むにはデジタル化が必須

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スマートウォッチの中には、一見従来型の時計と変わらないスマートウォッチも数多く存在する。その一例が、1884年に開かれたアトリエを原点とするスイスの高級腕時計メーカー・ブライトリングだ。

ブライトリングのスマートウォッチは見た目こそアナログ時計だが、スマホとの連携機能がある(写真:ブライトリング・ジャパン)

2015年12月に120万円のスマートウォッチを発表し、日本では2016年1月から販売を始めた。同社はパイロット向けに特化した腕時計を数多く世に送り出している。スマートウォッチとしての性能の中心は飛行距離の管理など特殊なものに限られている。「従来型の時計を使いやすくするためにスマートフォンとつなげた」というスタンスだ。

まだまだ成長続くスマートウォッチ市場

スマートウォッチ市場は、アップルウォッチの新製品発売後の10~12月に大きく盛り上がるという傾向の中で、徐々に拡大を続けている。調査会社IDCによれば、2017年1~3月にはスマートウォッチの世界出荷台数は1343万台に達した。IDC Japanの菅原啓アナリストは「市場の成長速度は新興国などでの需要を取り込み、ここ数年で急速に立ち上がっている。市場規模の拡大ペースは今後も好調に推移するだろう」と話す。

(出所)IDC

現在販売中のスマートウォッチを足がかりに、ラグジュアリーブランドは各社とも事業拡大に意欲的だ。タグ・ホイヤーのスマートウォッチは現在男性用のみだが、2018年から女性向けにも製品を展開する。ルイ・ヴィトンも、製品群を今後拡充していくという。

一方で課題もある。インターブランドジャパンの並木CEOはルイ・ヴィトンについて、「デジタルのスピード感は今までの(ルイ・ヴィトン製品の)サイクルとは違う。今後、(ラグジュアリーブランドとして重要な要素である)価値が古くならないという永続性と、デジタル技術をどう組み合わせていくかが重要」と指摘する。

スマートウォッチという未成熟の市場の中で、ラグジュアリーブランドは、高級感などのブランドイメージ維持と、顧客層の若返りや拡大という、時に相反する2つの命題の間での難しい舵取りが求められている。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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