【永守重信氏・講演】経営戦略としてのM&A(その5)

一橋ビジネスレビュー・フォーラム
「経営戦略としてのM&A~マネーゲームから国際競争力へ」より
講師:永守重信
08年7月23日 六本木アカデミーヒルズ(東京)

その4より続き)

●会社を休まないこと、そして3Q6S。

 最近では、16年かかって譲ってもらった日本サーボという会社があります。実はこの会社は、私がちょうど会社を創業したときに一番憧れていた会社なのです。モータ会社を創業したときにどこを参考にしたかというと、この日本サーボなのです。いつもバランスシートを横に置いて、このような会社を創らなければと思って、1973年に日本電産を創業したのです。ずっと憧れのマドンナみたいなもので、いつもこの会社を見てきました。それで今、この会社の再建をやらせてもらっていますが、やはり本当にいい会社です。

 結果的に何をしたかと言ったら、「当たり前のことを当たり前に」ということなのです。「出社日は休まずに来て欲しい」「職場をキレイにして欲しい」と。それは、3Q6S(Quality Worker, Quality Company, Quality Products)と整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾の徹底ということです。この2つだけしか言ってないのです。
この2つにはとても大きな意味があります。だいたい社員が士気を落とすと何が起きるかというと、まず会社を休みます。そして職場が汚くなります。この2つが社員のモラルを一番鮮明に表しているわけです。だから言い換えれば、この部分が良くなるということは、社員のモラルが上がってきているというわけです。

 「いや、そんなことはない。ものすごく汚いけれど、売上げも利益もすごく伸びている会社を知っているよ」という方が今日おられましたら、連絡していただければ100万円差し上げます(笑)。私はこれを何十年間も言い続けていますが、1回も100万円を差し上げた経験はありません。ということは、そんな会社は無いということです。だから言い換えれば、社員がよく休んでいて、そのうえ職場が汚く、社員のしつけができていない、そういう会社が仮に利益を上げているとすれば何かおかしいなと思います。

●自らの手で再建させることが大事、役員派遣や人員削減は行わない。

 要するに、当たり前のことを当たり前にやるということと、「これはあなた方の会社なのだから、日本電産がこの会社を乗っ取りにきたのではない。1年か2年ぐらい応援するけれど、後はしっかりやってください。あなた方が儲けたお金を、日本電産の私が来て鞄の中に入れて持って帰ることなどありませんよ。貰うのは株主に対する配当だけです」ということです。
 もちろん連結対象会社になっていますから、数字の上では連結でつながりますけれども、原理としては基本的に役員派遣や人員削減は一切行いません。一時的にどうしても足りないところは1人2人派遣して、再建が終わったら帰すというやり方ですから、結果的にはその会社の人が社長や役員になって経営してくださいよという考えでやっています。「自分の会社ではないですか。自分の会社は自分で守ってください」と。そういうことを指導させてもらうということなのです。
 「自らの手で再建させる」ということが大事なのです。親会社から役員はじめ何十人もどんどん派遣して再建しても、それはここで言う自らの手で再建させることにならないのです。だから最小限の人間しか行かない。私が毎週1回行くか、2回行くか。あと1人連絡役として行くだけであって、実際の再建者はこの会社の社長以下にやってもらわないといけません。
 人員派遣というものも、最小限です。1人か2人。社長も専務も替えてしまったら、うまくいくわけがないのです。そんな人材がいたら、もっとほかのところで使われていますから。現に行ってみたら優秀な人はいっぱいいるわけです。逆にそこから日本電産に来て部長になった人など、そういうことの方が多いくらいです。素晴らしい会社なので、いい人材はたくさんいるわけです。だから逆に「うちにしばらく来て欲しい」と言って頼むぐらいのことはあっても、人員削減などは一切ありません。
その6に続く、全7回)
永守重信(ながもり・しげのぶ)
1944年、京都府に生まれる。
職業訓練大学校電気科を卒業後、技術者を経て28歳の1973年に日本電産株式会社を創立。現代表取締役社長。
1980年代より積極的なM&A戦略を展開し、精密小型モータ開発・製造をコア事業として140のグループ会社を擁する企業へと発展させた。著書に『 奇跡の人材育成法』『情熱・熱意・執念の経営』(PHP研究所刊)ほか多数。
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