【永守重信氏・講演】経営戦略としてのM&A(その4)

一橋ビジネスレビュー・フォーラム
「経営戦略としてのM&A~マネーゲームから国際競争力へ」より
講師:永守重信
08年7月23日 六本木アカデミーヒルズ(東京)

その3より続き)

●基本的には同じ経営陣で再建、リストラは一切しません。

 今までの27社は話し合いで譲っていただきました。「お願いします、お願いします」と言って譲ってもらった会社が日本電産グループになっています。何年かかっても相手が納得するまで合意を行うので、ものすごく時間がかかります。これはこれで、決して悪い方法ではなかったと思っています。相手にも理解してもらって、なかなか譲っていただけない会社を譲ってもらった。その後その会社が良くなってハッピーになれるわけですから、決して悪くはないと思います。

 本来は、買収してからの方が大変なのです。大抵は業績が悪いですから、ここからがスタートです。M&Aが終わったと思ったときはまだ10%も終わっていないわけで、残り90%はその再建をしなければならず、これがなかなか労力のいることです。基本的に相手が一番不安がっているのは、「今から新しい経営者が来るけれど、来たら生活はどうなる」「リストラされないかな」「経営者も、全員辞めろと言われるんじゃないか」などということです。

 さらに「今までさんざん赤字を出してきたのだから、経営責任を問われるのでは?」とも心配されるのですが、私はリストラを一切しません。経営者にしても「あんな人と一緒に仕事したくない」と逃げていく方にまで「ちょっと待て」とまでは言いませんが、基本的には同じ経営陣でずっとやらせてもらっています。
 私達の方からサポーターは送っても、再建が終わったら全部引き上げることを基本としています。また、雇用が最大の社会貢献だと言っています。もちろん人が余っているときは、「1年間だけ日本電産グループに勉強がてら出向してもらえませんか」とお願いすることはありますが、一切人員削減はしません。まず、きちんと表明することから再建が始まっていくのです。

●1年で過去最高利益を実現

 例を挙げれば、実は買収する前の最終利益が100億ぐらい赤字の会社もあったのですが、これが再建して大体2年目ぐらいには創業以来の最高利益を上げています。業績の様変わりはあっという間ですね。しかし短期間で最高利益になるということは、そもそもその会社は基本的に非常にいい会社だということなのです。
 いわば、潜在的能力が非常に高い会社。1年間ですぐに新製品が出てくるわけがありませんし、新しい客が見つかるわけでもない。新しい工場ができたなどということもまったくありません。だから同じ場所で、同じ人で、そして同じマーケットで、それでなぜ大赤字の会社が一気に黒字になるのかとなってきますね。これはあくまで、そこにいる人たちの潜在的能力が非常に高いということなのです。

 私は、日本にはそういった会社がたくさんあると思います。本来ならばもっと利益が上がって、それでもっともっと成長してもいいのではないかと。しかし、現実にはそうなっていない会社がたくさんあるのです。それでもやはり経営破綻寸前までいかないと、なかなか譲ってもらえないわけです。
その5に続く、全7回)
永守重信(ながもり・しげのぶ)
1944年、京都府に生まれる。
職業訓練大学校電気科を卒業後、技術者を経て28歳の1973年に日本電産株式会社を創立。現代表取締役社長。
1980年代より積極的なM&A戦略を展開し、精密小型モータ開発・製造をコア事業として140のグループ会社を擁する企業へと発展させた。著書に『 奇跡の人材育成法』『情熱・熱意・執念の経営』(PHP研究所刊)ほか多数。
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