日米同盟への「過度な依存」は危なくないのか 中東情勢から学ぶ外交サバイバル術

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ただ、駐留米軍が存在しなければ、サウジの軍事圧力にさらされた可能性もあり、同盟関係が機能したと言えなくもない。カタールはサウジの宿敵イランに接近するなどの奇策に打って出ているほか、サウジは「敵の敵は友」という構図でタブーのイスラエルに接近を図っており、中東世界の流転はとどまるところを知らない。生存のためなら、主義主張も構っていられないということだろう。

このように中東世界では同盟が裏切りに見舞われたり、期待外れに終わったりすることも多く、生死を懸けた防衛技術の開発や外交戦が展開されている。

米国は本当に戦争をする用意があるのか

一方、北朝鮮がミサイルを日本に向けて発射したり、中国軍が尖閣諸島を占領したりした場合、本当に米軍は自国民の犠牲もいとわずに戦争をする用意があるのだろうか。英国の欧州連合(EU)離脱決定や「米国ファースト」のトランプ政権誕生というリベラリズム終焉のような国際政治環境の中、日本は同盟の意義や有効性を改めて真剣に考える必要性がある。

現在の東アジア情勢は、一国平和主義だけでは乗り切れない日本の脆弱性を露呈した。トランプ大統領の一存で、日本の安全保障が左右されてしまう危険性もないとはいえない。いざとなれば、誰も助けてくれない可能性もあるのだ。

こうした中、日本は、ミサイル防衛のさらなる高度化や、法整備、サイバー分野、衛星開発など諜報能力の向上に国力を注ぐべきではないだろうか。今回の北朝鮮危機や中東の国際政治を見ていると、そう強く思わずにはいられない。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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