船井電機「ヤマダ限定テレビ」に勝算はあるか 創業者が逝去、船越秀明社長の描く戦略は?

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――今回の自社ブランドテレビはヤマダ電機の通販サイトで見るかぎり、ほかの国内メーカーと大きな価格差がない。船井電機は低価格帯に強い印象を持つ消費者も多いと思うが、今回は戦略を変えたのか。

必ずしもそうではない。店舗での実売価格では、ヤマダ電機で売っているテレビの中でうちより安いものはないと思う。それに、テレビ自体に録画機能があるため、レコーダーがタダでついてくるようなものだ。

船越社長はヤマダ電機との提携を指揮した人物だ(撮影:尾形文繁)

――今回の「FUNAI」テレビでは、ヤマダ電機と10年間の独占販売契約を結んだ。ほかの家電量販店で売れないデメリットはないか。

「FUNAI」ブランドの認知度を上げるには、ヤマダ電機にお任せするのがいいと判断した。ブランド力を上げるには時間もおカネもかかるが、船井電機はOEM中心だったため、ブランドを育てるのが得意ではない。

ヤマダ電機はグループで国内に900以上の店舗を持っている。そこに展開できるのは大きい。家電もネット通販市場が拡大しているものの、日本ではテレビを店頭で買う人がまだまだ多い。家電量販店がネット通販のためのショールームと化しているともいわれるが、「FUNAI」テレビはヤマダ電機でしか売っていないので、価格を比べられたりネット通販に流れたりすることもない。

このビジネスモデルはほかのテレビメーカーにはマネできないだろう。ヤマダ電機に独占供給することはまず無理だからだ。どのメーカーも「ヤマダ電機さんのために頑張ります」と言った次の日には「ヨドバシカメラさんのために頑張ります」と言っている。同じ商品がいろいろなお店から出るから、値下げ合戦をすることになる。

われわれはヤマダ電機にしか売らず、ヤマダ電機もFUNAIテレビのために大きな売り場を作り、売ろうという意気込みを持っている。その結果想定以上に売れており、ヤマダ電機からはオーディオ商品も出そうという話が来ている。

100%AVの会社になるわけではないが…

――テレビ販売が売上高の8割以上を占め、テレビに大きく依存した経営構造になっている。しかし、5月の就任時にはテレビを含むAV機器事業に一層注力する方針を掲げた。その理由を教えてほしい。

AVでは海外ではウォルマート、日本ではヤマダ電機という大きなお客さんとのお付き合いがある。ここを生かさずしてどうするのかと思う。

AV事業に注力する方針で、船井電機は復活できるのか(撮影:尾形文繁)

昨年度まではプリンタ事業をAVに次ぐ柱として育てる方針だったが、想像以上にプリンタ市場の縮小が進んでいる。船井電機が展開するインクジェットプリンタ業界は米HP、キヤノン、セイコーエプソンが3強だが、そうした世界大手にケンカを売る体力もない。

そのため、今後は経営リソースをAVに振り向ける。私に社長のバトンが渡されたのも、AV事業を長年やってきたからだ。ただ、100%AVの会社になるというわけではなく、プリンタ関連でも業務用やニッチ市場向けなど将来性のある分野は継続して開発していく。

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