ダンロップ、世界的ゴルフブランドへの一手 松山英樹が使う「スリクソン」との微妙な関係

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その点は、わかりやすい。ただ、池田社長が口にした「4月に状況が変わった」とはいったい何を意味するのか。実は、「ダンロップ」というブランド名でスポーツ事業を展開できる地域は、これまで日本、台湾、韓国に限られていた。そのほかの地域で商標権を持っていなかったのである。世界で活躍する松山のキャップのロゴも、ダンロップスポーツのブランドのひとつである「スリクソン」であり、「ダンロップ」ではない。

そこで住友ゴムは4月、世界のほかの地域で「ダンロップ」の商標権を持っていた英スポーツダイレクトインターナショナル社から154億円で商標権を買収。これにより、海外の他地域でスポーツ事業に関して「ダンロップ」ブランドを展開できるようになった、というのが池田社長の言葉が意味するところなのだ。

国内のゴルフ市場は減少傾向が続いている。公益財団法人の日本生産性本部が7月に発表した「レジャー白書2017」によると、ゴルフ参加人口の減少に歯止めがかかっておらず、それに伴いゴルフ用品市場も減少傾向が続いている。2016年のゴルフ用品市場規模は3310億円で1992年の6170億円と比べて半減しているという。

国内市場だけでは、先行きは厳しい。ダンロップスポーツも当然、海外事業に力を入れている。が、これまでのように「ダンロップ」ブランドを使える地域が限られたままでは、ゴルフに経営資源を集中させてグローバル規模で事業展開している大手のタイトリスト、キャロウェイゴルフ、テーラーメイドと戦うのは難しかったのだ。

グローバル展開のために、何が必要か

世界で戦うには資金力と製品開発力、ブランド力が必要で、今回の統合でその両方を手に入れてスポーツ部門のグローバル展開に乗り出そうとしていることが見えてくる。

住友ゴム工業の池田育嗣社長(左)とダンロップスポーツの木滑和生社長(筆者撮影)

吸収・合併後のスポーツ部門の目標について池田社長は「タイヤ事業は2ケタ成長を目指しているので、それに伴ってスポーツ事業も伸びていってほしい」と説明。現在(売上高比率)10%を占めるスポーツ事業の割合に関しても、2020年、そして2025年の段階でも10%を確保したい考えだ。

2016年12月期の住友ゴムの連結売上高は7566億円で、そのうちダンロップスポーツが732億円。中核のタイヤ事業を伸ばしていく中で、スポーツ事業にも同じレベルの成長力を期待している。

その目標を可能にしうるのは、経営資源の統合による研究開発力、資金力、ブランド力の向上だろう。

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