市場75%減、日本の「屋根瓦」は生き残れるか 「地震に弱い」というイメージが瓦業界を直撃

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名古屋鉄道高浜港駅前にある、子どもの背丈ほどある巨大な鬼瓦。高浜市を中心とするエリアは、全国の屋根瓦の7割を生産する一大産地だ(記者撮影)

「昔、この辺りには瓦の窯元がたくさんあったよ。今じゃだいぶ減ったけどな」。タクシー運転手は記者にそう話した。

名古屋駅から電車で1時間。愛知県高浜市を中心とする一帯は、屋根瓦の名産地だ。良質な粘土が採取できる土地と、河川や港にも近く船便で全国に出荷できる地の利を武器に発展を続け、現在でも全国の屋根に用いられる瓦の7割はここから出荷される。

産地だけあって、車窓から見える戸建ての多くが瓦屋根だ。「屋根のことなら誰にも負けない自信がある!――瓦リフォーム工事」とうたう看板まで立っていた。

日本では1400年前から屋根材として親しまれてきた瓦。その伝統が今、岐路に立たされている。

「屋根瓦におカネはかけられない」

屋根瓦工場内部の様子。オートメーション化が進み、全国の瓦の20%を製造する(提供:鶴弥)

『日本書紀』によれば、日本に百済から瓦が伝わったのは西暦588年、飛鳥時代の直前だ。

当初は寺院や城郭の屋根材として用いられていたが、18世紀ごろには一般にも普及し始めた。

大火が頻発する江戸市中にあって、8代将軍徳川吉宗が瓦の耐火性に着目し、武家屋敷などにも用いられた。

明治時代に入ると庶民の住宅にも広がりを見せ、1950年前後からは本格的な工業生産も始まった。瓦は断熱性に優れるほか、経年劣化にも強く、現在の国の評価基準によれば耐用年数は60年にも上る。風雨にさらされる屋根材にはうってつけだった。

大手メーカーも製造ラインを増設して量産体制に入り、供給量が爆発的に増加。その後、住宅着工戸数が高水準で推移したこともあり、今や日本家屋の代表的な特徴の1つになった。

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