市場75%減、日本の「屋根瓦」は生き残れるか 「地震に弱い」というイメージが瓦業界を直撃

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ところが、1990年代から潮目が変わった。屋根瓦の住宅の着工件数が減少に転じ始めたほか、「家を購入する人の所得が下がり、屋根にまでカネがかけられなくなった」(業界団体である全国陶器瓦工業組合連合会の小林秋穂専務理事)。

加えて、どんな家にするかを工務店と相談しながら建てる注文住宅に代わって、メーカーがすでに建てたものを買う建て売り(分譲)住宅を選ぶ人が増加。

最終的にかかった建築費を施主が支払う注文住宅と異なり、あらかじめ設定された売り出し価格の範囲内で建築費を捻出する建て売り住宅にとって、屋根にまでコストはかけられない。

屋根瓦は初期費用こそかかれど、その後の維持費がほとんどかからないため、長い目で見れば高い買い物ではない。だが、ある大手建て売り住宅メーカーの場合、すでに「当社が建てる住宅の屋根材は安価なセメント製」なっているのが現状だ。

瓦屋根を豊富に取りそろえる大手ハウスメーカーも、「屋根瓦の施工には熟練した技術が必要。セメント製に比べて施工時間もかかるため、コストがかさみがち」と打ち明ける。

屋根面積も小さくなり、1戸当たりに使用する屋根瓦の枚数も減少した。かつては2階建てであっても1階に屋根がある戸建て住宅も多かったが、現在は2階にしか屋根がない戸建ても増え、乗せる瓦の枚数も3割ほど減ったという。

地震に弱いイメージが定着

新東は太陽光パネル付設可能な瓦を開発、需要の取り込みを進めている(記者撮影)

そこへ追い打ちをかけたのが、1995年に発生した阪神・淡路大震災だ。倒壊した瓦屋根の住宅の写真や映像が全国に流れた。

「瓦は地震に弱い、というイメージが瞬く間に定着してしまった」(兵庫県の淡路瓦工業組合)。実際のところ、「倒壊の原因は瓦ではなく、建物に耐震補強工事が施されていなかったこと」(大手瓦メーカー幹部)だという。

こうした風評もあり、瓦業界は一丸となって、風評の払拭に努めている。全国陶器瓦工業組合連合会がパソコン上で耐震シミュレーション実験を行ったところ、地震による倒壊は屋根材ではなく耐震工事の有無が原因という結果が出た。

「現在の屋根瓦は軽量化が進んでいるうえ、土で塗り固めるのではなく釘やビスで固定する。瓦は重いから危ない、という懸念は当たらない」(屋根瓦業界で売上高首位の鶴弥)。

大手ハウスメーカーの住友林業も、「十分な耐震実験を行い、安全性を確認している」(資材物流部部材開発グループの高嶋宏副部長)と説明。実際にパンフレットなどで、安全性をアピールしている。

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