米国の「北朝鮮攻撃」はどの程度現実的なのか 米ブルッキングス研ポラック氏に聞く<上>

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金正恩氏率いる北朝鮮は、引き続き積極的にミサイル発射や核実験を行っている(写真:ロイター)
北朝鮮問題の出口が見えない。北朝鮮がグアムへのミサイル発射計画を中止したことで、米政府も対話の可能性を示唆していたが、先月末には北朝鮮が再び北海道上空を通過するミサイル実験を行ったほか、9月3日には6回目となる核実験を実施。米政府も再び警戒感を強めている。
度重なるミサイル実験は、朝鮮半島における軍事衝突の可能性を高めているのか。米シンクタンク、ブルッキングス研究所の中国センター長、ジョナサン・ポラック氏に聞いた。

北朝鮮首脳陣はクレージーではない

――北朝鮮による9月3日の核実験により、米国が軍事行動に出る可能性に言及するまで緊張感は高まっています。米国が有している軍事的選択肢、あるいは、外交的取り組みについてどう考えていますか。

北朝鮮はプロパガンダを激しく行っていると感じており、米国はそこから多くのことを学べるだろう。米国内外でさまざまな報道が出ているが、多くは情報が不十分。今はしっかり時間をかけて北朝鮮の発言の真意を読み取る作業が必要だ。

北朝鮮の首脳陣はクレージーではない。核開発プログラム、挑発的なミサイル発射実験、核兵器実験は本質的に危険だが、現時点では、北朝鮮に対して抑止力が機能している、と考えている。1953年の朝鮮戦争の停戦以来、この抑止力は機能してきたし、今後も機能し続けるだろう。

抑止力を機能させ続けるには、北朝鮮が一度核兵器を使用すれば、米国の全面的な報復によってすべてが終わる、ということをハッキリとした態度で、北朝鮮に伝え続ける必要がある。

――米国が北朝鮮の核施設やミサイル発射施設を先制攻撃する可能性は増している?

ドナルド・トランプ大統領は最近、「予防戦争」という言葉を口にし続けており、北朝鮮の核兵器開発能力と、同政府からの挑発的脅迫だけで、米国が北朝鮮に対して軍事行動に出る十分な理由になることを示唆してきた。

だが、トランプ大統領が本気でそう思っているとは思わない。大統領はいつもちょっとした注目を集めたがっているし、単にいらだっている可能性もある。ハーバート・マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官も同じ路線の発言をいくつかしている。金正恩氏は必ずしも抑止力の決まりを支持しておらず、米国からの報復を恐れて攻撃を断念することはない、といった主旨の主張をしている。

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